乙女戦士の休日


茶越は怒っていた。
せっかく遊びにきているのに、団子ときたら、コミケの戦利品とやらに齧りついたまま、すこしも構ってくれないのだ。

「これ読んだらね」

そう言ってもう半時間。茶越はもう爆発寸前だ。

「団子」
「んー」
「まだかよ」
「もうちょっと」
「もう」

膨れっ面で睨んでも知らん顔。
いらいらと部屋を見まわす。
本棚にびっしり並んでいる漫画本なんか今は見たくもない。
茶越はただ団子の周りをクマのように歩き回った。

「団子ったら」

手をひっぱる。

「ん」

上の空のまま、団子は茶越の手を取った。

手の甲を撫でる。指の一本1本を丁寧にさする。
普段はこんなことはしてくれない。
心地よさに、まぶたを閉じて、その感触に酔っていたいと思った。
丹念にさすったあと、目は本から離さないまま腕を撫で上げる。
てのひらで肩を覆う。そして首筋、顎、耳。
団子の手がゆっくりとなぞっていく。
こんないい加減な態度なのに、その愛撫は繊細だ。
悔しくて、茶越は唇を噛んだ。

ばか。ちゃんとこっち見ろ。

団子は片手で腰を抱き寄せる。
シャツのボタンを開ける。ひとつ、ひとつ。
手を滑り込ませる。
乳首をひっかく。つまみ上げ、転がす。
腰がむずむずしてきて、膝を掏り合わせてしまった。
その先への期待に、血が、脚の間に集中していくのがわかる。

団子はしばらくそこを弄っていたが突然手を離した。
どうやら佳境に入ったらしい。

「団子」

茶越の声は自分でもいやになるほど甘く掠れている。
団子は目もくれない。

「自分のことは自分でやったら?」

団子の癖に生意気!

「やだ」
「なんで。できるでしょ」
「できるけど」

茶越は頬が熱くなるのを感じる。

「あんま気持ち良くならないし」

ちらり、と鋭い一瞥が茶越を捉えた気がした。
でも、すぐにその目は再び文字を追う。

お前、後でおぼえてろ。

「あんま・・・濡れないし」

こんな恥ずかしい告白を聞いても団子は本から顔を上げなかった。
その代わりに、片手で茶越の腰を引き寄せた。
お腹をたどって、下着の中に忍ばせる。

「ほら」

ぴち、とちいさな音がする。

「こんなになってる」

団子の指が動くたびに恥ずかしい音が響く。

「どこが濡れないんだろ。やーらしい」

弄るような声に、耳と下半身が直結してしまう。
茶越は身もだえした。

「お前の手、だから」

団子の手を両手で押さえる。もっとしてほしい、という思いを込めて。

「他の誰にもこんなにならない」

なあ、だから。

団子ははじめてちゃんと茶越を見た。

「しょうのない子」

今度は両手で抱かれた。
首筋に顔を埋める。
舌を這わせながら指を動かす。
液を掻き分けながら、奥へ。奥へ。
茶越が腰を引いた箇所をひっかいた。
はじめは弱く。やがてすこし強く。
奥から溢れ出す。あたたかいものが流れている。

「ん、んん」

もう、恥もなく腰を動す。もっと、もっとと体中でねだる。
団子はもう焦らそうとせず強く擦ってくれた。

「あっ、あっ」

小刻みに叫ぶ。全身を震わせる。
団子の手をしっかり握りしめたまま。

「茶越たんはほっとけないなぁ。かわいすぎる」

団子は背後から熱い息を吹き込み、あまったるく囁いた。

「最高だよ」

昇り詰めながら茶越は思う。
お前こそ、サイコーだ。

呆れたことに、団子はべとべとになった手で、また本を取り上げようとした。

「こら」

抱きついて、ちゅ、と頬に吸いつく。

「もうそんなん読むな」
「はいはい」

団子の手がすばやくお尻にまわり、下着が下ろされる。
その動きは待っていたようで、茶越はうれしくなる。
団子もしたかったんだ。

でも、口では意地悪く。

「焦らしやがって」

自分から唇を求め、いつもより性急に舌を絡める。
唇が離れると、茶越は命令した。

オレをほったらかすなんて許さない。
お前はオレを見てなきゃだめだ。

団子は苦笑いする。

「ほんとゼイタク」

そんなふうにしたのはどこの誰だよ。
それ以上の反論は、すべて唇で封じてやることにした。



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