これでも六話のヒロインです


「そういえば団吾殿、猫ちゃんの姿が見えないでござるが」

今更のような気もするでござるけど、
ベッドの上の巨大なネコのぬいぐるみから連想したのでござるよ。
(それにしても首に縫い目が盛大に入っているのが不自然でござるね)

「ニャミタスね、出て行っちゃったの」

団吾殿はちょっとしゅんとした声でそう答えられた。
道理でなんとなく、足元が淋しいような気がしてたでござるよ。
あの、いつも団吾殿にまとわりついてた真っ白いにゃんこ。
なんとなく小生意気そうな顔つきだったけど、
拙者を嫌ったりしないかわいいやつだったのに。

「それはさみしいでござるな」
「うん」

団吾殿はとても大事にしておられたから。
しかし、あの白ネコ、
団吾殿に頭や首を撫でてもらって、遊んでもらって、抱き上げてもらって、
一緒に寝て、(シモの世話までしてもらって、あたりまえだが)
思えばうらやましいポジションでござったな。

「できれば拙者が団吾殿の猫ちゃんになりたいでござるよ・・・」
「やだなあ」

あ、そりゃイヤでござるよね、拙者なんて。
ネコというよりブタでござるよね。
そんなの団吾殿にふさわしくない・・・。

「人間のほうがずっといい」

え、なんといわれたでござるか。
「話し相手になってくれるモンね」とにっこりする団吾殿。
本気でごさるか。いや、嘘でもうれしいでござる。
拙者のような人間よりかわいい猫ちゃんのほうが
自分でもどんなにいいかと思うでござるのに。
団吾殿はほんとにやさしいでござる。
拙者感激でござる。

「きっとニャミタスは仲間と楽しくやっているでござるよ」
「うん、そうだね」
「ところで、団吾殿、この縫い目はどうしたのでござるか?」
「ライオンに食いちぎられた」
「えっ!?」

そんなあっさり言うのでござるか?
どんな生活送っているのでござるか、団吾殿は・・・。
そりゃあ、ニャミタスも逃げたくなるでござるよ。拙者は逃げないけどネ。



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