コスプレの有効利用


「もう、ほんと今日だけだからね」

いつになく、ちょっと蓮っ葉な感じで
拙者の前に立った団吾殿の格好といったら。
思い切ってミニ丈のピンクのメイド服。
通販する際、黒の長いのにしようか迷ったでござるけど、
オタクは自分に嘘をついてはいけないでござる。
読者のニーズに答えるのも勿論でござるけど、
なにより自分の欲望を曝け出してこそ良い同人誌ができるというものでござる。
この服に合わせるのは定番の黒のオーバーニー。
もちろん、絶対領域はばっちり完備してるでござる。
黒とピンクの布の間に、その名に恥じないくらい、
そこだけ真っ白い肌がくっきりと!
想像してくだされ。

そしてとどめは真っ赤な髪からピンと立ったケモノ耳。
短いスカートから飛び出した長い尻尾も茶色でフワフワ。

「団吾殿がすると、本当に生えているようでござるな」
「どんな誉め言葉。それ」

あー、かわいい。こんなかわいい生き物かほかにいるだろうか。

最近、タレントがメイド服だのポリス服など着て
ポーズをとっている雑誌が普通にあるでござるが、
ちっとも萌えないのでござる。
彼女達がいくらルックスが良くても、
明らかに仕事でやってるのがミエミエだからでござる。
オタクと何の関係もない製作者の
「どうせオタクはこういうのでハアハアいうんだろ!!くれてやるよホラ」
という嘲笑が伝わってくるのでござる。オタクは鈍くはないのでござる。

今の状況は違うでござるよ。
この場合、メイド服はあくまでも、
団吾殿の愛らしさを強調するためのものでござる。
つまり、メイド服でなく、団吾殿が先にあるのでござる。

「資料だからね?わかってる」
「もちろんでござる」

それにしても、最近、
かわいいかっこうのかわいい子を見ても、
「あの服、団吾殿に似合う」としか思えなくなっているでござる。
もう末期でござるね。幸せだから全然いいでござるけど。

「じゃあさっそく」

拙者が手にするのはスケッチブック。
いくら可愛くて魅力的でも、写メにとってネットで流そうなんて気はないでござる。
そんなのは犯罪でござるからな。
他のものは絵を見て想像するのがいいでござる。
読者をあまり甘やかしてはいけないでざる。

「ネコらしいポーズをとるでござる」
「みぃ」

ベッドの上に四つん這いにしてお尻を突き出させる。

「ネコが人間の言葉しゃべったらダメでござるよ」
「にゃお」

クーラーをギンギンに効かせた明るい部屋の中で
不健康な行為に励む。
これがオタクの夏の過ごし方。
同じ不健康な行為でも去年までとはわけが違うのでござるよ。

拙者たちの好きな百合からは程遠い、
どころか真逆かもしれない関係でござるけど、
幸せだからいいのでござる。


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