兄貴・・・。
むっとするような人いきれの中で、火讐は何度目か分からない寝返りを打った。
兄貴・・・どんなふうにするんだろう・・・。
いけない、こんなことを考えてはいけないとわかっているのに、
気づくと思考はそっちに向かっている。
兄貴が女となんて、正直腹立たしいのに、
なんでむらむらくるんだろう。
一体どんなふうに・・・やっぱり激しいんだろうか。
それとも意外に優しいのだろうか。
いや、いけない。
合宿はまだはじまったばかりだ。
このまま悶々として兄貴の顔が見られなくなったらたいへんだ。
別のことを考えよう。そう、明日のことがいい。
今日はいつのまにかどこかに行ってしまっていたけれど、
明日は朝イチで誘って一緒に入ろう。
兄貴と温泉。楽しみにしていたんだ・。
一緒に湯船に漬かって、そのあとは背中を流させてもらおう。
きっとあちこちに歴戦の傷跡のある体を
「兄貴の背中広いっすね」なんて言いながらくまなく洗ってやろう。
で、あわよくば、
「次はお前のを流しちゃる」
「え、いいすよ・・・そんな恐れ多い・・・」
「よいよい。どれ・・・ほう、火讐は綺麗な体をしておるな」
「そんな・・・照れます兄貴」
みたいなことになったらいい・・・。
て、なにを考えてるんだオレは?あわよくばってなんだ?
また興奮してきてるじゃないか。こんなところでダメだ。
ああ、でも、ちょっと、ちょっとだけなら・・・。
火讐は薄い布団を引っ張り上げる。と。
「おい・・・なにやってんだ青少年」
げ。紋武。なんで起きてんだよてめーは!
「辛そうだな?大しゅきな兄貴様に慰めてもらいたいのかなぁ〜?」
こいつは、バカの癖にたまにすげー痛いトコつきやがる。
「黙れ。死ねっ」
ほかのやつらを起こさないためとはいえ、
小声では我ながら迫力が足りないと思う。
それをいいことにこのアホ、にやにやしながらとんでもないこと言いやがった。
「なんならオレが代わりにしてやろーかぁ?」
「ふざけんなっ。誰がてめーと!」
「ジョーダンだバーカ」
つい声が大きくなった火讐に紋武は軽く言い捨てる。
「てめぇがあんまりさびしそーなんでからかったんだよ。
ヤローはゴメンだっての」
性質が悪いにもほどがある。心臓が止まるかと思ったじゃないか。
「あーあ、誰かさんのおかげで目ェ冴えたわ。
オレも御手洗に習ってナンパでもしてこよーかね」
そういってどっこらせと腰を上げる。
勝手にしろと毒づきながら、ばくばくいってる胸に手を当てる。
よりにもよって紋武に、という気持ちと、
ほんのすこし紋武で良かったような気もち。
合宿は危険だ。どんなハプニングが起こるかわからない。
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