「火讐・・・ピアス・・・」
「あ、痛かったですか?」
「いや・・・」
確かに異物感とひんやりとした感触があるけど、
別に痛くはない。
むしろ、気持ち的に痛いんだよね。
ピアスの穴をあけるのって絶対痛いと思うんだ。
痛いの大嫌いなボクなんて、耳にだって考えたくない。
まして唇なんて・・・。
「こんなあちこち穴開けて」
指で触れると硬いそれをひとつひとつなぞっていく。
「タトゥーまでして・・・」
アイスブルーの瞳を彩る真っ赤な炎。
綺麗だけど、あまりに痛々しい。
「兄貴が取れって言うなら取りますよ」
「こだわりがあるんじゃないのか?」
「特にないっす」
「じゃあなんで・・・って・・・聞いてもいいか?」
火讐くんって、どこかに自分を痛めつけたい気持ちがあるんじゃないかな。
いや、普段はどちらかというと、どころか、
かなりS寄りだと思いますけど(汗)
自虐的な面が絶対ある。
火讐くんは、ちょっと恥ずかしそうに視線を落として答えた。
「あん時・・・バカになってたから・・・」
拳を壊したって話ね。
それにしても、今更だけどごめんね、火讐くん。
君の人生において重大なことを、
アニメの女の子が死んだことと一緒にしちゃってごめんね(泣)
「どうなってもいいって、めちゃめちゃやって」
うん、部活潰しの時は明らかにやけになってたよね。
「でも、そのおかげで兄貴に会えた。感謝こそすれ、後悔なんてしませんよ」
そう言って顔を上げてにっこり笑う。
「オレを救ってくれたのは兄貴っす」
君のまっすぐな目はまぶしすぎるよ。
君の愛はボクには重すぎる。
ボクは君が思うような人間じゃない。
でも、この強そうで実は不安定な子をしっかり受け止めてあげたいと思う。
ちょっと前までなら考えもつかなかったことだけど。
これってボクもすこしは漢らしくなってきたってことかな?わ、恥ずかしい。
ちょ、火讐くん、なんでそんないいこと言った直後にそんなことするの?
ぬいぐるみの猫のしっぽか何かと勘違いしてない?
そんな無造作に握っちゃだめだって!ねえ。
「兄貴の名前入れようかと思ってたんすけど」
それでもって、そんなことをさらりと言うんだね。
「バカ言うな」
「兄貴が望まないことはしませんよ」
だーかーら、そんな殺し文句やめて。
ほら、しっぽが・・・ああ・・・。
ちょ、目を輝かせないで(汗)
もう、この子はほんとうに・・・かわいいなぁ、もう。
|