「よ。だんごっち」
家の前で、思わぬ人がボクを待っていた。
「あ、蓮くん!」
すっかり険が取れて、もうボクが知っている蓮くんの顔だ。
「蓮くん、大丈夫?なんか、首都校にやられたって噂が流れてるけど」
「あ、それ流したのオレ」
「え!」
「ついでにオレ、番長やめたから」
「ええ!」
蓮くん、脱ヤンキーしちゃったの?!
いや、蓮くんのためにはいいことだけど。
もともと心優しい蓮くんに向いてるとはとても思えないし・・・。
でも、大丈夫かな?ヤキ入れられたりしてない?
「へーきへーき。オレ、強いもん」
さすが実力で番長になっただけある。ボクとは違うなあ。
まあ、立ち話もなんだから、とりあえずうち上がって・・・。
「兄貴ー」
げ。火讐くん。なんで満面の笑みでこっちに駆けて来るの?
今日約束してなかったでしょ?
あんまりくっついてたらストーカーって呼ばれちゃうよ?痛い子だよ?
ボクの側に駆けつけた火讐くんは蓮くんをちらりと見て表情を変えた。あーあー。
「お前!オレの仲間をボコボコにしたやつだな!」
すごまれても蓮くんは相手にもしないといった態度。
「うるさい」
「なにぃ!?」
「だんごっちはもう気にしてないよな?なぁだんごっち」
ちょ、蓮くん挑発しないでよ。
火讐くんの前でその呼び方はまずいから・・・。
ほら、火讐くん、ますます険しい顔になっちゃった。
この子すごく怖いんだからやめてよ・・・まあ蓮くんも怖いけど・・・。
「なんだその女々しい呼び方は!兄貴、なんとか言ってやってくだせえ!」
ほら、やっぱりそうなる。
間に挟まれるなんていやだよ。ちょっとギャルゲーぽいけど・・・
はらはらしてるボクときりきりと眉を吊り上げる火讐くんを交互に見て、
蓮くんはにやりと人の悪い笑みを浮かべた。
「お前、だんごっちのこと好きなのか?」
な、ななななな。
「え!!か、関係ねーだろっ」
真っ赤になって怒鳴ってる火讐くん、だだっこみたいでかわいいや。
「知ってるか?だんごっちの秘密・・・」
「な、・・・!?ちょ・・・」
ボクは蓮くんをひっぱりよせ、急いで囁く。
「蓮くん!!言ったら絶好だからね!」
ああ、蓮くんにやにやしてる。完全に楽しんでるよ。
「あのな・・・だんごっちはな・・・」
ああ、なんだろう。
オタクってことかな?いじめられっこだったことかな?
あれが小さいとか・・・はさすがに知らないかな。
どうしよう。心当たりがありすぎるよ。
「わーーーーー!」
「言うな。聞きたくない」
「え!?」
「兄貴の嫌がることなら聞きません」
か、火讐くん、なんて漢前なの・・・!!
蓮くん、ちょっとがっかりしたかな?
と思ったらすぐにまたあの笑いを浮かべてこう言った。
「お前、だんごっちの好きなタイプ知ってるか?」
え、ボクそんな話しましたっけ?
火讐くんもこれは知りたそう。
「あのな・・・」
「・・・」
「聞きたい?」
「言いたくねーなら話すなよっ」
「まあまあ。特別に聞かせてやっから。あのな・・・」
な、なにいう気だろうこの子。
ボクもどきどきしちゃうよ。
「明るい髪の、元気な娘。」
それ、渚たんだ!
でも、違って聞こえるよ明かに。
ほら、火讐くん、乙女のような顔になってる。
「そんでな、つるーでぺたーの」
いや、つるぺたなんて言っても火讐くんわかんないよ。
「いざってとき、正義の味方に変身できる子」
・・・蓮くん、うまいこと並べたなぁ。
ボクでも感心しちゃう。
ようするに誉めてもらったわけで、
火讐くんもそれ以上蓮くんに突っかかる気にはならなかったみたい。
その場は蓮くんの退出で事なきを得ました。
でも、蓮くん、うちの子をあんまりからかうのやめてよ。胃に穴が開いちゃう。
あとで電話で文句をいったら蓮くん、
「マブダチを取られたんだから
ちょっとくらいからかったってばちはあたらねーだろ」
だって。
「ま、だんごっちが幸せそうだからいいけどな」
「蓮くん・・・」
「それにオレ、だんごっちは好きだけど、
お前の描いてる同人誌みたいなことしたいって思ったことないし」
もう、いつ読んだんだよ。それにボクは百合専門です。
「ところでだんごっち、もうもうこはんは取れたん?」
「よ、よけいなお世話だよ!」
「言っちゃおうかな〜。あ、もう知ってるか。むしろ見てるか」
「もう、ばか」
ああ、蓮くん、番長生活の影響でさりげなくいじめっこキャラに
なっちゃってるね・・・。
案外、めっちゃ向いてたのかもね・・・。
元同じ境遇でも、とことんいじめられキャラのボクとは違うよ、さすがに・・・トホホ。
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