きっとそれは


微笑みの貴公子とでも呼びたくなるような笑顔。
すれ違い様に、ふんわり人工的でないいい匂いが漂ってきて
くらくらきそうになった。

こいつはヤバい。

こんな、よく言えば70年代少女マンガのヒーローのような、
悪く言えばBL漫画の鬼畜攻めキャラみたいな男、
不自然だろ!?ジャンプ的に。
絶対アレは腹黒だ。
取り巻きの女連を隠れ蓑にした超ホモだ。
悩み相談と偽って弱みを握って手篭めにする気だ。

気をつけろ、団吾。

そんな、自分でもどうかと思う忠告、団吾が聞くはずがない。
一応番長なのに三日と空けず生徒会室に通うなんておかしいだろ。
お前あいつの前では素に戻ってるだろ。
ぶっちゃけ、もうメロメロだろ?
まあ、優しくされ慣れてないから仕方ないのかもしれないけどさ。
(こいつはちょっと優しくしてくれる女がいたら
すぐ結婚を申し込んでドン引きされるタイプかもしれないな。)

舎弟どもときたら、いつものことながら、まったく頼りにならない。
「あんなナマっ白い男なんか」と侮っていたくせに
あっという間に魅了されてしまった。
今では「会長には手を出すな」という暗黙のルールまで出来ているらしい。
お前らがそんな調子じゃまずいんだよ。
いいのか。お前達の大事な兄貴がメスイヌにされて。

「ていうか、茶越」
オレのグチを黙ってきいていたモンブランさんが
はじめて口を挟んだ。
「そこまで言う必要あるか?」

必要ですか。必要は、ない。

「実際、いいヤツだろ、あの会長さんは」

ええ、そうですね。九分九厘、普通にいい人なんだと思いますよ。
でもね、むかつくの。ホモの攻めにでもしてやらないと気がすまないの。

このみっともない感情は、そう、わかってる。
嫉妬ですよ。間違いなく。
オレ以外のヤツの前で素になるなっての。バカ団吾。



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