兄貴の趣味は古典的


オタのくせにといったらなんだけど、ボクの趣味はわりと古典的なんだ。

百合なら「まりみて」よりも大正時代のS小説が好き。
台詞がすごいんだ。
百合スキーさんの中には、
「こんなに大げさに同性に萌えられるなんて(笑)」
なんて揶揄する人もいるけどまったくなってない。
この良さが分からないで百合好きといえますか。

ああ、ボクも大正時代に生まれてこんな恋がしたかった・・・。

平成に生まれてオタクしてるのも悪くないですけどね。
最近では番長にも慣れてきたし・・・。好きな人も出来たし・・・。
ん?
火讐くん、なに見てるの?
ボクのカバン・・・ひ、開いてるじゃないかぁ〜!

「兄貴・・・これ・・・」

そ、それは・・・!
ボクのバイブル、吉屋信子御大の「返らぬ日」が見えてた!
大正時代の名門女学校の寄宿舎での美少女同士の愛が濃く綴られてて、
とってもいいんだ。
とにかくすんごく濃いんだから。両想いだし、一緒に寝るしお風呂も入るし・・・
て、違う!

「その・・・妹に買ってきたんじゃ!」

なんか、典型的なエロ本のごまかし方みたいになっちゃった・・・
て、しまった!
ボク、「妹とやった」とか言っちゃってたっけ。
しかも兄貴語録集にしっかり入ってるし。
火讐くん肌身はなさずもってるって言ってたし(汗)
リアル妹のいる火讐くんには読み捨てならなかったはすだよね。どうしよう。

「兄貴、妹がいたんすか」

ああ、火讐くん、逞しいなあ(泣)
都合の悪いことは綺麗にスルーできるんだ。さすがだよ。

それにしても・・・。

美少女になって美少女と恋がしたいなんて、
よく考えるまでもなくヤバい、
男子高校生として終わってる自覚はあったよ、これでも。
それが、まあ。
よりにもよって見事に逆ベクトルに突き進んでしまったもんだと
感心するよほんと・・・。

「兄貴・・・こうするといいですか?」

まあ、幸せだからいいんだけど。

「火讐・・・無理せんでいいぞ」
「無理じゃない・・・」
「ほら。苦しそうじゃないか・・・」 
「オレが不慣れだから・・・兄貴を満足させてあげられないから・・・頑張るんです。
これくらいさせてくだせえ・・・」

うう、火讐くん、なんて、なんて健気なんだろう・・・! 
ボクも頑張るよ。精一杯。

「無理せんでいい・・・」
「無理なんて・・・」
「そのままでいいんだ」
「え・・・」
「オイはただ、火讐そのもののお前が好きなんじゃ」
「兄貴・・・」

「火讐、オイは、お前を愛して愛して愛しぬきたいんじゃ・・・」

一度言ってみたかった台詞だよーー!!!
ちなみに「返らぬ日」のヒロイン弥生の台詞だよ。
おしとやかなのに激しいんだよ。
パンピーにこんなこと言ったら絶対ドン引きだけど、
火讐くんなら大丈夫、だよね?

「兄貴・・・」

ああ、火讐くん、目をキラキラさせている。
期待以上だよ、この子は、もう!ばか!ばか!

「火讐、ふたりであのコンベンショナル(伝習的)な
凡庸な自然への反逆ののろしを上げる
者達になりとうはないか?」

はぁ〜こういう大時代的な言い回しすると、
恋に酔ってる感じとか盲目的な感じがして雰囲気出るなぁ〜。もゆるなぁ〜。
て、あれ?

「なに言ってるかわからないっす、兄貴」

・・・ですよね。普通に考えて。
調子に乗りすぎました。

百合小説の読みすぎ・はまりすぎには注意しましょう・・・。



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