夏祭り


似合うでござるよ。思ったとおり、最高でござる。

心配ないでござる。あの店は格安でござるからな。
しかしあつらえたようにぴったりでござるね。
さすが外国人サイズまで揃っていると自慢するだけのことはあるで
こざるな。

おかしいから見てるんじゃなく、かわいいから見てるんでござるよ。
だいいちこのお祭り、若い人はたいてい浴衣姿で来ているでござろう。
ちょっとくらい背が高くたってそうそう目立つものでもないでござる。
そう縮こまってないで、
せっかくの着物なんだから、背筋を伸ばしてないとおかしいでごさるよ。
大丈夫、知っている人はいないはずでござるから。
いても絶対気づかないでござるよ。

え、すっぴんだと服に負けるんじゃないかって?
そのままが断・然!いいでござる。
拙者、メイクした顔は嫌いでござる。
どうしてああも剣のある顔になるのでござろうか。
眉を剃って目の周りを黒々と塗っている女子とは
目を合わせるのも怖いでござるよ。
ああ、紅くらいは風情があっていいでござるが・・・。
え、これ、色付きリップ、持っていてくれたんでござるか?
すごい光栄でござる!
てっきり机の中に置き忘れられたまま消費期限が切れるのが関の山だと・・・。
え、拙者が?いいのでござるか。
じゃ、じゃあ、遠慮なく・・・。
団吾殿、上を向いてくだされ・・・。

ああ、夢のようでござる・・・。

拙者のとなりには石鹸のにおいのする団吾殿。
しかも、紺地に百合の花を散らした浴衣姿。
清楚な白い帯に髪には生花まで挿しているとくる。
拙者もう死んでもいいいいでござる。
むしろ今死んだら最高のフェラリーになりそうでござる。

思い出すでござるな。

団吾殿、拙者がはじめて団吾殿の部屋に呼んでもらった日のことを
覚えているでござるか?
いえ、団吾殿は覚えてないでござろう。当然でござる。
拙者には忘れられないのでござるよ。

うたたねひ○ゆき氏作画のセラフィック・フェザーの抱き枕が
お迎えしてくれたのでござる。
団吾殿は「ボクの嫁」と紹介してくれたでござるな。
それはそれはうれしそうに。
うたた○氏のフェザーも団吾殿の笑顔も美しかったでござるな。

知ってるでござるか?
抱き枕はその筋の人々にさえ「最後のハードル」と
呼ばれているのでござるよ。
「もう明日はいらない。彼女も要らない」という覚悟の度合いを測るもの
なんだそうでござる。
実際、何かの間違いで公共の電波に乗ってしまった
抱き枕に腕枕して眠る成人男性の姿は
同じオタクでさえ見るに耐えないものでござったからな・・・。
あれは強烈でござった。
かく言う拙者も恥ずかしながらまだ世間体に屈している一人でござる。
それを可憐な団吾殿があっさりと、すこしも恥じることなく越えているので
ござるからな!
ああ、この人は違う。神だ、と。
一発でKOでござるよ。

えへへ、これ、何気に告白でござる。
ああ、音がする。花火が始まったでござるな・・・。



BACK