温泉でGO 兄貴の背中ひろーい 編


そーっと、そーっと。

ゆうべは散々だったけど、今朝は早起きして、
(と、いうより、ほとんど眠れなくて)
一番にやって来た。
ボク温泉好きなんだよね。せっかくきたんだもん。
このホテルの名物、滝湯に入らなきゃ。

まだ6時だし、さすがに誰もいないはず。
カラカラ。お邪魔しまーす。

「おはようさんです兄貴!」

だから、どうして君はどこにでもいるんですか。

「兄貴、背中流させてくだせぇ」

火讐くん、朝からいきいきしてるなぁ。

「兄貴の背中・・・流したいんです・・・」

まあ、背中くらいならいいですけど・・・。
ふたりきりなのがちょっと不気味なんですが・・・大丈夫、だよね?

「じゃ、じゃあ、頼むかな」
「はいっ」

どうでもいいけど、いったいいつからスタンバっていたんだい?君は。

湯腰掛に座ると、火讐くんはいそいそと背中に回る。
ちょっとほっとした自分が情けない。

「兄貴・・・」
「なんだ?」
「兄貴の背中・・・つるんとしてるっすね」

そりゃ、抱き枕より重いもの持ったことないオタクですから・・・。

「もっとこう、傷跡とかあるって思ってたんすけど」
「オイは治りが早いんじゃ」

また適当なこと言っちゃったけど、顔の傷はって聞かれたらどうしよう。

「なるほど!さすが兄貴!」

ああ、まただまされてくれたね。ありがとう。

「じゃあ、流します・・・」
「おお・・・」

こしょこしょと石鹸をあわ立てるちいさな音。
違和感を感じて振り返ってみて驚いた。

「ちょ、なんで手で直接?タオル使わないんじゃ?!」
「タオルじゃオレの気持ちが伝わらないかと思って」

いやいやいやいや。タオルでも充分気持ちは伝わるから!
そんな真顔で言わないで。
それより、気持ちとはなんだとか、つっこんだら負けなんだろうな・・・。
いや、絶対つっこまないけどね。ボクの身が危険だから(汗)

「大事な兄貴の体をタオルでごしごしするのは勿体無くって・・・」
「む・・・」
「気持ち悪かったっすか?兄貴」
「う・・・」

そんなふうに言われたら折れるしかないでしょ。

「いや、頼む」
「はいっ」

火讐くん、楽しそうに手でぺたぺた泡を塗りつける。
これって、ソー○○ンドみたいな光景じゃない?(汗)
今回も大暴走の予感だよ・・・。

「兄貴・・・強さはこんくらいでいいっすか?」

火讐くん、ボクの背中で塗り塗り、こしこししながら聞いてくる。

「お、おお・・・ひっ」

突然の刺激に腰が浮きかけた。

「き、気持ち悪いだろうがっ、背中の真ん中の筋をツーっと指でなぞるな!」
「兄貴の背中・・・すげー綺麗っす・・・」

聞いてないよこのこ・・・。
しかも、さっきは傷ないのおかしいとか言ってなかった?

「兄貴・・・」

あの、火讐くん、手、止まってるよ?
なにこの空気・・・なんかきそうくるぞくるそ・・・。

「あーずるいぞ火讐!」 

思いもかけないものがキターーーー!

「兄貴の背中はオレが流すんだ!!」
「いや俺が!!」

舎弟さんたちの乱入だよ!
なんでみなさん朝6時からそんなに元気なんですか。
ちょ、まとわりつくのやめて。
頭をボクの背中に擦り付けないで。
どさくさにまぎれて首舐めないで。
そして

なぜそこをそんなにしてるんですか!!!

タオル越しとはいえすっごく気持ち悪いんですけど!
擦り付けないで欲しいんですけど!!

もうやだよぉ〜オタ友さんたちのところにかえりたいよぉ〜。

「お前ら!兄貴が困ってるだろううが!」

火讐くんの一喝でボクに対する暴行(としかいいようがない)はぴたりとやんだ。
いや、ありがたいけど、自分のこと思い切り棚に上げてるよね?
舎弟さんたちこなかったら似たようなこと君がしてたよね?

ぶっちゃけ、冗談半分の舎弟さんたちより、
火讐くんのほうが数倍困るんですけど。

でも・・・きっとまた、流されてしまうんだろうな・・・。
そしていつか負けてしまいそうな気がする。ひしひしと。
とりあえず、今日も貞操が守られたことを喜ぼう。

これでも番長やってます、ボク・・・。



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