「しかし、昨日の祭り部派遣は面白かったですね」
「ああ、そうだな」
舎弟たちとの会話の合間にさりげなく、
火讐はさりげなくズボンのポケットに手をあててみる。
二重になったポケットの奥にごつごつとした感触がある。
良かった。
この内ポケットはめったなことでは見つからないはずだが、
なにかの弾みに飛び出したりしたらどうしよう。
一見お菓子のようにかわいいパッケージのそれは、
ちょっとチャラ男風の舎弟から没収したシロモノだ。
棄てようとして思い直し、未使用であることを確認してから
こっそり自分のポケットに忍ばせてしまった。
硬派で鳴らした自分がこんなものを持ち歩いているなんて・・・。
紋武あたりに見られたらなにを言われるか・・・。
「やっぱ、男の尻はえくぼが出来るくらい引き締まってないとですね。
ねえ火讐さん」
「ああ」
舎弟達の話が上の空になっているのに気づいて、はっと顔を引き締める。
「しかし、兄貴の尻はどうなんすかね」
「兄貴?兄貴のは・・・」
ほんのすこし前に、裸同然の想い人の姿を見て、
無意識に「すげえ・・・壊れちまう」と呟いてしまった自分が
心底嫌いになったんだっけ。
そんなことを考えていたのか自分は。よりにもよってあの人相手に。
そんなことは望んでないはずだけど・・・。
ほんの最近までボクサー志望だった火讐である。
そういう経験は、正直言って、ない。男女ともに。
だから具体的にどうするのかは知らない。
なんとなく、そうなったらうれしいな、と漠然と思うだけだ。
いや、決してそんなことはない。
ないとは思うけど、万が一、百万が一にでも、
そういう空気になったときに、だ。
必要なものがなくておろおろしているうちに
そんな気がなくなってしまったら困るではないか。
いや、決して望んでいるわけではないのだが・・・。
具えあれば憂いなしというから・・・。
「そりゃ鋼のように引き締まった尻だろうよ」
「ですよねー」
尻もみたいが、できれば前も・・・。あ、なに言ってんだオレ・・・。
やっぱり痛いのかな・・・
でも、兄貴なら、きっと気持ちよくなれると思う・・・。
ほんのささいなきっかけでエスカレートしてしまう妄想に頭と体を悩ませながら、
15歳青春真っ盛りの火讐はポケットの中の秘密兵器をそっと撫でた。
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