プレゼント
期末テストはもう一週間後。 拙者達は団吾殿の部屋で黙々と勉学に励んでいた。 さすがに今日はオタ活動はなし。 拙者たちだからこそ、勉学はおろそかにできないのでござる。 オタクたるもの親を嘆かせない程度の成績は保つべし。 だが、今日はそわそわして身が入らない。 (もちつけ、拙者) クーラーはキンキンに効いているし、シャワーも浴びてきた。 今更どうしようもないところはどうしようもない。諦めるしかないのだ。 今あるものだけで最善を尽くすしかないのだ。 「団吾殿」 拙者は思い切って切り出した。 「受け取ってほしいものがあるでござる!」 教科書から顔を上げた団吾殿の前に綺麗にラッピングした小箱を突き出した。 「これ」 「なにかな?ボク誕生日終わったけど・・・」 そういいながらも、素直に包みを開く団吾殿がかわいらしい。 ややあって、 「これ・・・」 物問いたげに拙者を見つめる団吾殿にあわてて手を振った。 「その、いつもおやつとかご馳走になってて、 武士として義理は通さねばならぬと思っていただけでござるから!」 なにか、支離滅裂でござるね。文章がめちゃくちゃでござる。 「と、とにかく、拙者が団吾殿にあげたいだけでござる。 へんな意味はないのでござる。けっして」 「へんな意味って・・・」 団吾殿は口に手を当てて軽く吹き出した。 「アリガト。御宅田くん」 ああ、やっぱり団吾殿は違う。 ドラッグストアでどれにしようかこれがいいかなと わくわくしながら選んでいる時、 犯罪者を見るような目で拙者を見た女人たちとは全然違う。 「でも、これ、色がつくヤツだよね?」 そうでござる。だから選んだのでござる。 「うれしいけど・・・ちょっと、無理」 あーもう可愛い。なんでござるかこのイキモノは。 団吾殿はまるでわかってないのでござる。 ご自分の可憐さ、守ってやりたくなるような愛らしさを。 ご自分がどれだけ人を引き付けているのかも。 「あ、無理にとは言わないでござる。 拙者はただ、団吾殿にそれが似合うと思ったから・・・」 白い頬にぱっと紅葉を散らす団吾殿。 そんな団吾殿の頬におそるおそる手を伸ばす。 その前に緊張に汗ばんだ手をティッシュで拭うのは忘れない。 「団吾殿・・・触ってもよいでござるか?」 軽くうなづく団吾殿の頬に、宝物を扱うように大事に大事に手を添え、 団吾殿の手の中からリップクリームを取り蓋を開ける。 頬に添えていた手を顎に添えなおし顔を少し上を向かせる。 長いまつげが影を落とす白い顔に見とれながら、 かたちのいい唇に薄紅色の弧を描く。 本物の口紅だったらどんなに魅惑的になるだろう。 あ、今、幻聴が。 あのツンツン頭の舎弟殿の声でござる。 『ブタのくせに。ブタのくせに。ブタのくせに』 うるさいでござるね。こっちの団吾殿は拙者たちのアイドルなのでござる。 それにしてもいい匂い。甘ったるくそそる苺の匂い。 「こんないい匂いさせてたら舎弟殿たちが盛ってたいへんでござろう」 「もう。バカ」 いや、冗談じゃないでござるよ。 頼むからそんなかわいい仕草で首を振らないでほしいでござる。 盛るでござるよ。拙者が。 「学校ではこっち。こっちのメンソレータムつけるでござるよ」 「準備良すぎだよ御宅田君・・・」 いや、ホント、いくら心配しすぎても足りないのでござるよ、団吾殿の場合。 あたかも花が蝶を引き付けるかのように、 団吾殿は回りの男達を引き付けてやまないのでござるから。 これ以上の抜け駆けは殺されそうだからやめておくでござるけど。 ああ、まことご馳走様でござった団吾殿。 おかげで向こう半年分くらいの燃料になったでござる。 |
なんというか、オタ団メインのサイトになりそうな予感。
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