「団吾どの、団吾どの」
「ん、何。御宅田くん」
今日はイベント間近の日曜日。
ボク達は御宅田くんの家で新刊の原稿に励んでる。
スケジュールはきついけど充実した疲れっていいよね。
すべてを出し終わった後の爽快感って癖になっちゃう。
「この、肝心のシーンでなぎさタンの表情がうまく出せないんでござる」
「ああ、ここ」
ひみつだけど、今回の本はちょっとエッチめなんだ。
あくまでソフトにだけど。だってボクら16歳だし。
やっても15禁止まりでしょ。
「ここは、ほのかタンの意外にも荒々しい愛撫に
まだあどけなかったなぎさタンの表情が
すこしだけおとなの女に変わる、
大事なシーンでござるよ!」
う、説明しないでよ。恥ずかしいじゃない。
自分で書いてるくせになんだけど。口に出して言われると違うよ・・・。
「これが一番大事なんでござる。
このコマを書きたいがためにこの漫画描いてるんでござる!」
うん、そうだよね。そういうこだわりってあるよね。オタクだもの。
「だから」
でも、だからって。
「団吾殿にモデルになって欲しいのでござるよ」
この展開はないんじゃないでしようか。
「え、ボクが?」
ボクがなぎさタンのモデルってありえないでしょ。
「そういうの、女の子に頼んだほうが・・・」
「ひどいでござるよ団吾殿」
言い終わらないうちに小森君からまで抗議の声があがった。
「拙者たちには女人の友達なんてひとりもいないのでござる!!」
「まぁたん、ひどいよ」
「ご、ごめん」
いや、わかるけど。ボクもそうだから。
結局引き受けちゃった。
泣かれそうだったから仕方ないよね。
御宅田くんのベッドはうちのより広い。
その広いベッドに腰かけたボクを
クロッキー帖を抱えたふたりが囲むような格好。
「そこに横になって」
言われたとおり、枕に頭をつけた。
体のラインを見たいって言うから、
シャツは脱いで素肌にタンクトップ一枚。
「眉寄せて。切なげに。そう。口半開きで」
せいいっぱい注文どおりの表情を作ろうとする。
うう、火讐君あたりに見られたら今度こそ愛想つかされるだろうなあ。
「そうそう、いいでござるよ団吾殿・・・もっと色っぽく。舌で上唇舐めて」
なんだか部屋の中が暑くなってきたみたい。
クーラーもっと下げてもらおうかなあ。
「じゃあちょっと喘いでみようか」
「ど、どんな風に?」
「あン、と鼻にかかった声で」
「こ、こう?」
わ、ヘンな声出た。
自分のとは思えないカン高いやらしい声。
「いいでござる。最高でござるよ団吾殿」
なんか、ハアハアいってない?恥ずかしいからよく見られないけど。
「ちょ、ちょっと、まぁたん」
それまでもくもくとペンを動かしていた小森君がはじめて指示を出した。
「タンクトップまくって。おなかのラインみたいから」
「え?うん・・・」
自分で腕を伸ばす。
「もうちょっと・・・上まで」
「え、でも」
おなかならともかく、胸は見たってしようがないんじゃないかなあ。
「もうちょっと・・・ち、ちくびが見えるくらいに・・・」
乳首って・・・。
「あ、あくまで参考にだから・・・」
参考に、なりますか?
男の乳首で。なぎさタンのとは似ても似つかないと思うけどなあ。
「これでいいの?」
「最高だよ。まぁたん」
「輝くばかりに綺麗なピンク色でこざるよ」
「や、やめてよ」
あわてて手で隠したら、その表情いただき、とすごいいきおいでふたりのペンか動く。
なに?さっきの言葉責めみたいなのも原稿のためだったの?
なら仕方ないか。
熱い視線に晒されたせいだろうか。
ボクの体もいつしかほんわかと熱くなっていった。
たっぷり一時間ばかり好きにしてから、
彼らはようやくボクを開放してくれた。
「団吾殿のおかげでいい本が出来そうでござる」
「ほんとうに、まぁたんは救世主だよ」
ふたりとも、ものすごくほくほく顔だ。
そんな友達を見てるとボクもうれしくなる。
「そう・・・」
恥ずかしかったけど、役に立てたのなら良かったな。
だって友達だもんね。
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