オレの恋人は理想とは程遠い。
御手洗団吾。何度聞いても美味しそうな名前だと思う。
ま、オレも人のこと言えないけど。
趣味はギャルゲー。日々二次元美少女の攻略に精を出している。
Aボーイ、というとちょっとカッコヨク聞こえないでもないが、
ようするにキモオタだ。
のだが。
が、だ。
なんでか好きなんだ。
今日はついにこいつの部屋でベッドイン。
誘ったのはオレ。
しかも、ぶっちゃけ、かなり強引に誘った。
(しかし、この抱き枕なんとかならないか?)
オレはそうとう恥をしのんでる。
役割もいいほうを(たぶん・・・)譲ってる。
なのに、このバカ真っ最中に、
「ない」
って言いやがった。
「なにが」
「いや、その、穴が」
ぶっとばすぞこの野郎。
「男にンなもんあったとして、なんのためについてると思ってたんだ!」
お前がそっちもイケるのはわかってたけど、あれは参考にするな!バカ!
「え、あ」
そうか、とポンと手を打つ。
その仕草がいかにもオタクくさいなあ、と思うとどっと疲れが出た。
しかし、こいつ、ほんと馬鹿だ。
自分の体考えるとわかりそうなもんなのに。
そこがオタクか?現実には目をつぶりたいのか。
つっこみすぎてそんな気もなくなっちまった。
起き上がり、あぐらをかいてうなだれる団吾の前にビシッと指を突き出す。
「なんかさあ、お前、番長ん時はびしって決めてんじゃん。
実生活でもできんの?」
ぶっちゃけ、団吾が汚い言葉を吐くたびにぞくぞくしてるんだよな。
普段ひ弱な男がいざって時に男らしく決めるんだぜ。
オレ、ギャップ萌えか?
「汚い言葉の一つも吐いてみろよ」
「いい様だな。てめーはオスなんかじゃねえ。メスなんだよ!」
「・・・もういい。お前向いてねえ」
なんでこんなの好きなのかなあ。
特大の猫のぬいぐるみをバックに気弱そうにオレを見つめるこの男は
ちょっとばかり顔はいいがどう見てもキモオタ。
(ああ、学校の奴らに見せてやりたい)
なのに、なのに。
(かわいいぜチクショーー!上目遣いするなーーー!!)
終わってる。終わってるよオレ。
ほんとに得なやつだ!
「茶越君、怒ってる?」
「怒ってねえよ」
まあいいや。
キモオタで、馬鹿で、気弱で、なにより同性で、
理想とは程遠いけど。
オレにとってはその名の通り、とってもスィートな恋人なんだから。
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