本気☆不安☆始めての夜


「で」
受話器の向こうの茶越くんの声が容赦なく脳内に響く。
「するんだ。ついに」
「・・・うん」
「まあな、いつかこんな日が来ると思ってたよ。
避けられない事態ってやつだ」
「・・・茶越くん」
「ま、健闘を祈る。添え木でも当ててがんばりな」
「なんでダメになる前提なんだよ・・・」

うう、どうしてこうなっちゃったんだろう。
ボクがオタクってことも言えずじまいのまま、
結局虚勢を張ったまま、火讐くんとこんな関係になっちゃって。

しかも、はじめてだっていうのに、場所は火讐くんの家。
ホテルに行くお金はないし、ボクの家は昼の間もお母さんがいるから無理とはいえ、
いろいろ気を使わせたことを申し訳なく思いながら、
ボクはチャイムを鳴らす。

「お待ちしてやした」

すぐに火讐くんがお迎えしてくれた。
なんだかいつも以上に血色がいい。しかもほんのりいい匂いまでして・・・
あ、お風呂に入ってたんだ。
いつものボクならキャッと叫んで逃げ出しかねないところだけど、
今日は番長。顔にも出さない。
さりげなさを装って火讐くんの後から階段を上る。

「どうぞ」
「む・・・」

ま、真っ白なシーツ!
いや、別に普通だけど、なんか、こう、初夜って雰囲気だ。

そのシーツの上に、火讐くんはぽふん、と腰をおろした。
すこし間を開けてボクもそれに習う。

「む、火讐・・・震えておるぞ。怖いか?」
「武者震いっすよ・・・」
顔こそすこし赤いものの、火讐くんはきっぱりと言った。
「兄貴・・・大丈夫、準備は万端っす。来てくだせえ」

火讐くんはこんなときも男らしいなぁ。感心しちゃうよ。

「本当にいいのか?」
「あたりまえっす。この日のために・・・」
「オイのために、準備してたのか?・・・この手で、いじくったりしてたのか?」

エロっぽく囁いて手を口に持っていく。
これって、いつか同人誌で読んだ台詞だよ。
まさか使用する日が来るとは思わなかったよ。

「言わないでくだせえ・・・恥ずかしいっす・・・」

し、してたんだ!?
あんまり深く意味考えてなかったけど、実はとんでもない台詞だよ。
わーー恥ずかしい!

「オレをこんなにしたのは兄貴っすよ・・・責任とってくださいね・・・」
「ああ、わかってる。かわいいやつ・・・」
「兄貴・・・」

引き寄せると、火讐くんは素直にボクの胸に顔を埋める。
ああ、ちゃんと兄貴らしく出来るだろうか。
掛け値なしのチェリーのこのボクに。

「大丈夫っす・・・理論武装はばっちりっすよ・・・」

理論武装って・・・なに、そんなに想像してたの!?

「あの、ちょっと」
「ん?」
「最中に、その、オレが、痛いとかやめろとか言っても・・・
やめないでくだせえ」

ああ、火讐くん、やっぱり突っ込まれる方のシュミレーションしか
してないんだ(汗)
しかも、どんだけすごい期待してるの!?
ボク・・・応えられる自信ないよ・・・!

どうしよう。茶越くんの言うとおり、添え木でもしようか・・・。
それとも・・・なんとかっていうエロい道具使ったり・・・。
ああ、だめだ。そんなの、火讐くんに申し訳ない。
ああ、やっぱり、これしかない。

「すまん、火讐!」
いきなり頭を下げたボクに火讐くんは当然驚いただろう。
「え?」
「実は、お前らに隠していたことがある!」
「なんすかあらたまって」
「実はな・・・オイは・・・」
「え、なんすか?」
「・・・オイがなにを言っても、嫌いにならないと言ってくれ!」
火讐君はぽかんと口を開けている。

ごめん。イメージ崩れまくりだよね。でも、仕方ないんだ。

「オイは、お前の期待には応えられん・・・」
「ええ?」
「火讐!」

彼の手首をつかみ、下に持っていった。

「え、あ・・・兄貴・・・そんないきなり・・・」
「どうじゃ?」
「・・・」
「わかったか?」
「兄貴・・・」

せめて、目をそらさずに精一杯彼の目を見つめる。
と・・・なんか・・・感触が・・・。

「か、火讐、なにいつまでも触ってんのじゃ!?」

ボクの股間部分で火讐くんの手が動いていた。
そりゃ、自分で触らせたわけだけど、それは大胆すぎない?

もうしっかり赤くなっているに違いないボクの顔を火讐くんはまじまじと覗き込む。
「こんなん気にしてたんすか・・・?」
「え・・・」
「オレ、どうでもいいっすよ。兄貴だったら」

そういって、それはそれはうれしそうに微笑んだ。

「オレが好きなのは兄貴なんすから」

火讐くん・・!!!君って人は!!(号泣)

「火讐!」
「それに、でかくないほうが便利っす」
「え・・・?」
「その・・・女のと違ってやっぱキツいでしょ?それに・・・その・・・」
「なんじゃ?」
「オレが・・・兄貴に・・・口で・・・ごにょごにょ・・・する時にも」

えええええええええ!!!!!ななななななんてことを!!!!!

「かかかかか火讐!!!!」
「オレ、兄貴のたっぷり可愛がってあげたいっす・・・」

気づくと、ふたりとも膝に手を置いてもじもじしていた。
まるで本当の新婚さんみたいに。

「兄貴・・・」
「かかか、火讐・・・」
「そんなに真っ赤になって・・・かわいいっす・・・」
「ばばばか」

それから。

「いくよ、火讐くん・・・」

もうほとんど素のボクで。

「こんなもんでよくなれるかどうかわかんないけど・・・」
「「こんなもん」より、兄貴だから感じるんすよ・・・」

とりあえず添え木はいりませんでした(汗)
相変わらずボクはへたれで、肝心なことは隠したままだけど、
頑張って君の理想の男に近づいて見せるから。
そのときまで待ってて。

・・・その前に、ボクがオタクってバレたら、
立場が逆転しそうな気がするなあ(汗)
いや、明らかにする。
ま、火讐くん相手ならそれも悪くない気がするからいいんだけどね☆


乙女攻め×漢受け(笑)
Sさんのおかげでようやく火讐くんを漢にしてあげられました☆


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