強気なあのこと弱腰なボク
ガチャリ。 火讐くんが、後ろ手に鍵を閉めた。 「さて」 先に部屋に入ってたボクにくるりと向き直って真剣な表情。 『俎上の鯉』。 なぜかそんな慣用句が頭に浮かぶこの瞬間。 個室に二人っきり。逃げ場がない。 火讐くん、バッと上着を脱いで床に放る。 そしてじりじりとボクににじり寄る。 ボクは壁を背にして後ずさりたいのを必死で堪えている。 うう、火讐くん、こわいよお。 ボクよりちいさな体にものすごい威圧感がみなぎっている。 やめてよ。ボク、決闘しにきたんじゃないんだからね。 ボクを追い詰めた火讐くんは、はじめてにっこり笑った。 「やりましょう、兄貴」 そう、ボクはえっちをしにきたんです。 学校帰りにね。 ちなみに今日はなんてことのない平日。 ふたりでこっそり派遣組を抜け出して火讐くんちに直行。 そのへんは、共犯者感覚ってやつでわくわくしたよ。 誰もいないのを見計らってちょっとだけ手を繋いだり。かわいいカップルしてましたよ。 でもね、部屋に入った途端怒涛の急展開が待っていたわけ。 正直、想像しないでもなかったけど・・・ だってはじめてじゃないですから・・・。 でもね、もうちょっと、もうちょっとそこにいたるまでのプロセスってやつがぁ・・・。 そこが美味しいんじゃないの?違う? 考え込むボクの前で火讐くんはさっさと服を脱いでいる。 「兄貴も脱いでくだせえ」 「あ・・・ああ」 ひぃ〜。いくら男同士だからって、火讐くん、情緒がなさすぎるよ。 あったら恥ずかしくなっちゃうと思うけど、少しくらいは欲しいよ。 「あ、あの、火讐」 「なんすか」 「シャワー、使わせてもらえんか?汗になったので」 普通はするでしょ?最初のときにもしたし・・・。 とりあえず上着だけ脱いでもじもじしているボクに、 火讐くんきっぱりと言い放った。 「いらないっす」 「いらないって・・・」 「時間の無駄です。7時になったら親帰ってきますんで」 ええーーーーー? 「それまで時間を有効利用しましょう」 ちょ、待ってよ。そんならやらなきゃいいじゃない! もうヤンキーさんの考えることってわかんないよ 「火讐、親御さん帰ってくるのなら、休みの日にでもゆっくり・・・」 「なんで?」 「は?」 「まだ30分ありますよ。十分じゃないすか」 えええええ〜〜〜〜??? 「一回はやれます。ささ、兄貴」 焦るボクの服を手際よくはいでいく。 そしてとんでもない大胆発言が飛び出した。ああ〜〜〜。 「まず一回抜きます?それともいきなり本番いきますか?」 「ちょ・・・風俗じゃないんだぞ!」 「オレは、兄貴と一回でも多くやりたいだけです」 「うっ・・・」 目がキラキラしてる・・・こんな酷いこと言ってるのに。 「ここにくるまでにも、べつにやりたいって思ってたわけじゃんす・・・ けど、兄貴見てるとやっぱりやりたいんす。止まらないんす」 と、止まらないんですか・・・それはそれは・・・はは。 ちょ、そういいながらぱんつに手をかけないで! やめて!ボク、まだ心の準備が・・・!! 「兄貴の・・・いつ見てもかわいいす・・・」 ああ、さすがに見慣れたんだね・・・。 えーと、何回目くらいになるだろう。 少なくとも4回目? 「ちいさくてもちゃんと固くなるんすね・・・勃ってもかわいい・・・」 ぶっちゃけ、4回といっても一日にクリアしたんですけどね・・・。 だから、ちいさいって言わないでください・・・ちいさいけど。 ああ、ひょっとして、誉めてるつもりなのかな? 「あ・・・ちょ・・・そんなの口に入れるな!き、汚いから」 「全然汚くないすよ・・・兄貴の体に汚いとこなんかないす」 わ、火讐くん天然たらしだ!同人誌みたい。 「も・・・いいから・・・やめろ」 「兄貴・・・」 「もう十分だ」 それ以上されると出ちゃいますから・・・。 火讐くんは離したそれをいとおしそうに撫でている。 「このちいささが無性に可愛くてしょうがないんす。 ちいさいのが頑張る様子が・・・」 ちいさいちいさいいいすぎなんですけど。 てか、ほんとに誉めてたんだ・・・いいよ。火讐くんなら。 「兄貴はこんなところもやさしく出来てるんすね・・・」 ああ、そう解釈してくれますか・・・ありがとう(泣) 「さあ・・・兄貴」 「む・・・う、後ろを向いてくれ」 えーと、正常位のほうがいいとは思うんだけど。 でも初心者は後ろからのほうが入りやすいって書いてたし。ごめんね火讐くん。 「兄貴」 「なんだ」 「オレ、兄貴の顔見てやりたいっす」 うん、火讐くんならそういうと思ってた。 でも、で・・・できるかなぁ?? 「お前の体に負担がかかるかもしれぬが・・・」 「構わないっす」 「じゃ、じゃあ・・・前から・・・」 よっ、ヨイショっと、これでいいかな・・・? 火讐くん、体やわらかいけど、この体勢はきついよね・・・? 「火讐、つらくはないか?」 「平気っす」 「痛かったら我慢しないで言えよ?」 「はい・・・」 ボクの首に腕を回して、火讐くんはしっかりとボクの目を見た。 「兄貴・・・きてくだせえ」 は、はぁーーー深呼吸して・・・。 「いくぞ、火讐」 「うう・・・」 「あ、は、はぁ」 「は、はぁ・・・入った、っすね、兄貴」 「ああ・・・」 「うれしいっす・・・」 「火讐・・・」 うう、そんなかわいい顔でにっこり笑わないで。 きゅんきゅんするじゃないか。ばかぁばかぁ。 「お前の中、すごく熱いな・・・」 「兄貴のも熱いっすよ・・・兄貴、気持ち、いいですか?」 「ああ・・・すごく、いい。最高だ」 火讐くんの体をぎゅうと抱きしめながら囁く。 「このままずっとお前と繋がっていたい・・・」 なんて恥ずかしい殺し文句! う、ずっと、と自分で言ったくせにこれは・・・。 うっ・・・こ・・・こういうときは、因数分解でも思い出してるといいって聞くけど・・・ そんな、こんなにまっすぐな想いをぶつけてもらってるのにそんなこと・・・ 火讐くんに悪いよ・・・どうしよう・・・。 とかなんとか考えてる間に終わっちゃいました。 「火讐・・・お前の中、気持ちよすぎじゃ・・・」 やっぱりいいわけくさく聞こえちゃうかな? いいわけ以外のなにものでもないからしかたないケド・・・。 うう、ごめんね、火讐くん・・・ 気持ちよくなる暇なんかないよね・・・3分で終わったら。 「いいんすよ。オレは兄貴とくっついてるだけで幸せっすから」 決して不満そうな顔は見せない火讐くん。 絶対絶対がっかりだったはずなのに。 壮大な夢を見ていたはずなのに。 なんて健気なんだろう。 「じゃ、もいっかいやりましょ」 「え・・・!」 くっついてるたけで幸せじゃなかったの? 「一回でも一秒でも多く兄貴を感じたいんです・・・」 だからそーいう天然殺し文句をぉ〜〜〜。 「もうドロドロになってるから滑りいいっすよ」 「うう・・・」 短小の上に早くて、しかもマグロで、 いいとこなしのボクなのに、 火讐くんにとってはダメダメじゃないんだね。 積極的にいいところ、いいところだけを感じ取ろうとしてくれてる。 男冥利に尽きます、ほんと。 だから、頑張るしか、ないよね、うん。 結局3回くらい頑張って腰はがくがく。 火讐くんのほうは何故かつやつや。 「兄貴の頂きました!」 「うう・・・」 なんか、新聞部派遣のときみたいになってる。 でも、いいや。幸せだから。 ああ、幸せという字は辛いに似てるって本当だったんだなぁ・・・。 |
こうやって精気を抜かれているわけです。
[BACK]