家族の肖像 2


「あ、番長さん」

わぁ、セーラー服姿のチョコたんだぁ。
珍しくシャワーなんか浴びて台所でのんびりしていたらまた会っちゃった。

「邪魔してるぞ」

前と違って、今日は「事前」だからちょっと余裕だよ。

「知世子はよい仕事をするな」
「見てくださってるんですか」
「大事な妹分の初主演作だから当然じゃ。
ヒロインのただ能天気なだけでない性格の深みが良く出ていたし、
とくに悩んだ末、正義の味方になろうと決意するシーンはよかったぞ」
「そんなに細かく・・・ありがとうございます・・・」

と、普通に話していたのに、
チョコたん、急に真っ赤になっちゃった。
あれれ?今更なに?
両手で顔を覆ってうつむいてしまう。

「ど、どうした知世子」
「いえ、ごめんなさい、ちょっと・・・」

肩が震えている。
ようやく上げた顔は紅潮し、目に涙が溜まっている。
どうやら笑っていたらしい。

「思い出しちゃって・・・」
「なにを?」
「うちのお兄ちゃんて硬派でしょ?」
「ああ、そうだな」
「グレたといってもお酒もタバコも不純異性交遊も
軟弱だって見向きもしないんだから。
たぶん日本で一番硬派ですよね」
「そうじゃな」

チョコたんはほんとに火讐くんが好きなんだなあ。

「ほんとに面白いの。私の読んでる本までチェックするんですよ。
ちょっとでもやらしい記事なんてあったら、本破くどころか、
本屋に火をつけかねない勢い。面白いでしょ?」

うん、面白いね。家にいたらすっごく閉口するけど。

「それが、昨日・・・」

そこでチョコたんは堪えきれなくなったようにぷっ、と吹き出した。

「熟読してたんですよ。私の部屋で。少女誌のエッチ記事」

えええええ。

「いつもは淫売養成所とか口を極めて罵るお兄ちゃんが!それがおかしくって」

いえ、おかしくないです。それは・・・。
ええええ。どんな記事なの?

「知世子はそんな激しい雑誌を読むのか・・・」
「やだ。普通の少女漫画ですよ。見ます?」

いや、いいです。絶対みたくありません。
なんとなーく想像つきますから・・・。

「でも、ほんとに」
「む?なんじゃ知世子」

「番長さん、愛されてますよね」

うん、それはそう思う。


チョコたんはとってもいい子。


BACK