嫌オタ兄の野望


いうまでもなく、火讐くんは嫌オタだ。

何があったのか知らないけど、親の仇のようにオタクを忌み嫌っている。
そんな嫌オタの火讐くんが、
ボクのいい加減な説明で「銀河魔女っ子☆シスターズ」に
興味を持っちゃった。

ぜひ観たいなんて言われては、嘘ついたものの責任として
一緒に観なきゃということになって、
じゃあぜひにとチョコたんも加わることになった。

つまりは、今現在、火讐くんちのリビングで第一話鑑賞会が行われているわけ。

知世子ちゃん・火讐くん・ボクで並んでゆったりとソファに座っている。

嘘がばれるのは怖いけど、それ以上にかなりうれしかったりする。
だって、チョコたんと一緒にチョコたん主演のアニメ観られるなんて、
ファンクラブ会員ナンバー1番としてこの上もない名誉だよ。
わくわくしながら時が来るのを待つ。

0時ジャスト、ド派手な音とともにOPが始まった。

う、うわ、電波ソングだ!

しかもさりげなくエッチ系の歌詞・・・。
早くも火讐くんの顔が険しくなってる。

「ノ、ノリのいい曲だな」
「でしょう」

胃の痛くなるようなOPが終わり、物語はごく普通の学園生活から始まった。
「遅刻遅刻」と食パンくわえて駆けてきたのは
スレンダーな美少女、ポプリたんだ。

「ふむ。バスを追い抜くことで彼女の運動能力の高さがよく表れているな」
「さすが番長さん」

いかにもミッション系といった感じの校舎に飛び込んだポブリたん、
先生に遅刻を咎められてしょんぼりしている。
どうやらポプリたんはこのダンディな中年の教師に片思い中の様子。
て、アニメージャにそう書いてあったんだけどね。

お、次に出てきたセクシー女教師の声はまさしくベテランのOさん!

「よく聞く声だな」
「そうです。私達の神様ですよ。ご本人さんもすっごく素敵な方で、
もう、めちゃめちゃ緊張しちゃいました」

うわ、チョコたん、いいなぁ。ナマのOさん、ボクもお会いしたい。

そんな和気藹々とした空気の中でアニメは流れ、
やがて、深夜だけあって、ちょっとエッチな展開になってきた。

さっそく火讐くんの鋭い声が飛ぶ。

「なんであの女いつも発情してるんだ!?」

発情?!あ、女の子のほっぺがみんな赤いからかな?

「これは萌え系というやつで・・・純愛なのだ」
「純愛!?」


火讐くん、いやぁな顔をしたけれどそれ以上口を挟まず画面に向き直った。
そんなめちゃくちゃ怖い顔でにらみつけないでよ、美少女アニメを(汗)

あ、パンチラが・・・。チラリというよりモロだけど、

くるぞ。絶対来るぞ。

「なんで純愛なのにパンツ丸出しなんだ!
なんで中身が透けてるんだ!兄貴教えてくだせぇ!!」

やっぱりキタ。しかも、嫌オタさんの追及は厳しい!
しかし卑猥卑猥だよ!
あの硬派な火讐くんがおにゃのこのぱんつの中身について言及するなんて
なんて破廉恥っ。

「あ、あれはだな・・・様式美というやつで・・・
あの世界のぱんつはああなのだ・・・」
「全然わからないっす」
「そういうものだ。オイの言うことを信じろ」
「・・・はい」

しおらしくうなだれる火讐くんにすこし胸が痛む。
ごめんね、火讐くん。
確かにおかしいよね。人前で堂々とすけすけのぱんつを見せてる女の子なんて。
火讐くんのほうが正しいよ・・・。

戦闘シーンの間中、ポプリたんの短いスカートは用を成してなかった・・・。

「知世があんなパンツ丸出し発情女の役をやらされてるなんて・・・」

吐き捨てる火讐くんにチョコたんも黙っていられなくなったらしい。

「やらされてるんじゃないの。やりたくてやってるの」

はじめて見るような強い表情で抗議した。
もちろん火讐くんはひるまない。

「知世!お兄ちゃんはお前をそんな破廉恥に育てた覚えはないっ」
「なによお兄ちゃんだって!」

どうしよう。兄妹喧嘩始まっちゃった。
というか、「お兄ちゃんだって」何してるの!!???

「私知ってんだから!お兄ちゃんが夜中に・・・」
「ええ!?」

か、火讐くん・・・夜中になにしてるのさぁーー!?

「このあいだお兄ちゃんの布団干してあげようと思ったら
枕の下から番長さんの写真出てきたし」

ええ!?

「しかもハッピとふんどしだけだったし・・・」

えええええええーーーー!!!!

「ち、知世!そ、それはだな・・・兄貴のお姿を夢に見られるように・・・」
「それになんかシミが・・・」
「知世子、それくらいにしておいてやれ」

ほんとお願いします。これ以上お兄ちゃんを、というよりボクを困らせないで。
火讐くんが悪い道に走っているのは知ってた、
というよりボクも当事者だから、今更、だから、さ・・・。

「いいよ。お兄ちゃんだって男の子だもんね」


ああ、にっこり笑うチョコたんは大人だなぁ。
そういえばいつの間にかケンカ終わってるね。心配するほどのことは・・・。

「大好きな番長さんをオカズにマ○タベーションに耽ることだってあるよね」

ぶーーー!!
チョ、チョコたん・・・大人すぎるよ!!

「オレはそんなことしない!兄貴が汚れる!」

つっこむとこ、そこですか!?
チョコたんの大胆発言はいいの!?まだ中二だよ?

「ほんとー?うん、でも、信じる。
お兄ちゃんは好きな人を汚したりできないよね」
「もちろんだ」

あの、火讐くん、そこそんなに胸張るところじゃないですから・・・。

「番長さんの・・・やっぱりすごく大きいのかな・・・」

今度はチョコたんが悪い道に!!
兄妹で目をつけるとこ一緒?!

「いや・・・逆に・・・・かわいらしいというか・・・」

そしてそんな素朴な問いに真顔で答えないで火讐くん!

「火讐!!」 
「猛々しくないところが兄貴のよさなんだ!」

フォローしなくていいから!!
というか、フォローがまるで逆効果だから!!!

あああああもう帰りたい・・・・・
全然頭に入ってこないよぉ、アニメの内容なんて。
あこがれの声優さんの前で羞恥プレイ・・・
どころか、本人から攻撃受けてるし。ああ・・・。

「悪いが便所借りるぞ」

いたたまれなくなって逃げちゃった。
5分後。
そろそろ落ち着いたかな、と戻ってきたら・・・。

「知世になら、貸してもいいんだぞ」
「要らないよそんなの」

何を!?何を貸すの!??
なにこの兄妹!!

あ、写真、写真だよね?
てっきりボク本体を貸し出すのかと思っちゃった。はは・・・。

「兄ちゃんはお前には純潔でいて欲しい。だが、それが無理なら・・・」

そうかぁ。火讐くんの夢は兄妹どんぶり(下品)だったんだ・・・。
なんてこった!!うすうすそんな気はしていたけど!
溺愛する妹と同じ漢を共有したいとかそういうわけ?
いっそ3P・・・て、らめえええ中学生!中学生! 

「兄貴にはあと2年ほど待ってもらって・・・」

ああ、もう、いやだ、この兄妹・・・。
ボクってとことん受けにできてるようです・・・。




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