ミイラ取りがミイラに?


「で、」

団吾の部屋で座布団の上に正座して向かい合う。

「なにが、で、だよ」
「今日はお前に大事なことを聞きたくてきた」
「なに?」

露骨にいやそうな顔すんなって。
お前オレ相手にはまるで遠慮ないな。
ならばオレも遠慮なく。

「お前ら、どこまでいってる?」

「な!」

案の定、団吾は飛び上がらんばかりに驚いた様子。

「なんだよー。教えろよぉ」
「報告は要らないって言ったじゃない!」

確かに言った。
「付き合うのは勝手だが、オレに報告はしないでいいからな」って。

「言葉の文ってヤツだ」
「意味わかって言ってる?」
「うるせー。やっぱ気になんだよ。
もう一ヶ月だし、そろそろ最後の線までいった?」
「いってない!」

お、大声だな。

「じゃあどこまで?」

返事がない。

「なーなー」
「その・・・」

肩をすぼめてもじもじしている。
床にのの字まで書いてるぞ。ほんとにやるやつはじめて見た。

「キスくらいしたのか?」

こぶしを口に当ててこくん、とうなついた。
なんかいちいち反応が萌えキャラだ。

「そんだけ?」

追求しても、あー、とか、うー、とか不明瞭な言葉しか返ってこない。

「彼、求めてくるだろ?」

首が外れそうなくらいぶんぶん振る。
なんだか女の子にセクハラしてる気分になってきたぞ。

「んだよ。まだかよ。つまんねー」
「なんですかその言い草は」
「とっくにのしかかられて脱童貞してるのかと思ったのに」
「ば、そんなことしませんっ」
「マジで童貞なんて捨て物なんだからあんま深く考えずやっちゃいなよ」
「なんて子なのっ。お母さん悲しいよっ」

おい、いつからお母さんになった?

「考えるよ、そりゃ・・・結局だましてるわけだし」
「それで喜んでんだからいいじゃん」
「がっかりされたらいやだし・・・」
「がっかりするって決まってるわけ?」
「いろいろ期待されてるから・・・」
「自分から望んだんなら文句言えないだろ。ぐちゃくぢゃ言うようなら
一発パシーッとひっぱたいてやれ」
「乱暴だねえ」
「兄貴らしいかと思ったけど」
「いやだよ。殴るなんて・・・」
「かー。だらしねーの」
「ほっといて」


「でもさ」

声を落とし、ナイショ話口調で尋ねる。
といっても二人きりなんだけどさ。

「ここだけの話、彼、そうとう激しくない?」
「そのへんはノーコメントで」

がっかりだ。お兄さん君にはがっかりだよ。
こいつにその手の期待をするほうがバカだけどさ。わかってたけどさ。

「お前見るからに性欲薄そうだもんなー」
「君がボクの何を知ってるというの!!?」
「性欲に流されてやっちゃった、なんてのはないだろし」
「そ、そんなことは・・・ないことも・・・」

あとのほうは聞き取るのが精一杯の小さな声。

「お、あるの?」
「ちょっとだけ・・・」
「マジ?!詳しく聞かせてよ」
「えーー?」
「なぁなぁ」

迷惑そうな顔したってほんとは話したいんだろ?
みんなそうなんだよ。

「その・・・ボク、キスなんて気持ち悪いって思ってたんだけど・・・」
「ふんふん」
「実際やってみたら・・・
気持ち悪くなくて・・・それどころかなんか・・・
すごく・・・き、気持ちイイもんじゃないかって・・・それで・・・」

そこまで言うと真っ赤になって両手で顔を覆った。
やばい。これはやばい。やばいですぞ・・・。

「茶越くん?」
「ムラムラっときた」
「はい?」
「オレとやろう!」
「なに言ってんの?」

超スルーですか。

「練習ってことでひとつ」
「バカ言ってんじゃないよ!」
「問題ないだろ?オレのほうがかわいいんだし」
「火讐くんのほうがかわいいです」

さらりと言ってくれるのね・・・。
ちょっとハートブレイクだなオレ・・・。

「なんてのはもちろん冗談だけど」

まったくこいつはひどいよね・・・。

「タチが悪い」
「ムラムラしたのはホント」
「さいてい・・・」
「ミニスカポリス着て今の台詞もう一回言って」
「絶対い・や・だ」
「お前もオタクならかわいい台詞はかわいいカッコで言ったほうが
萌えるってわかるだろ!」
「なにしに来たんだよほんとに・・・」

最後のはただの照れ隠し。

からかうつもりがいつも振り回される。
だからやめられないんだけどさ。
あんまドキドキさせないでくれよ。
どうせお前は、オレが悪い道に迷い込んだって責任なんかとってくれないんだろ!
わかってるさ!ふん!




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