やられっぱなしじゃないんです
「御宅田くん・・・なにこれ?」 ああ、そんなゴミを見るような目で拙者を見下ろさないでくだされ。 団吾殿のその目はどんな女人のよりもこたえるでござるよ。 「本気で女装するなら矯正ぱんつの上にこれが基本でござる」 これ、と差し出したのは三角型のちいさな布切れ。 「いやだよ!変態じゃない!」 あ、やっぱり。さすがにこれはいやがると思ってたでござる。 「変態ではないでござる。コスプレの完成度の追求でござる」 完ぺき主義の団吾殿を説得するにはこれが一番でござる。 「で、団吾殿はどれがいいでござる? 拙者はやはり、この白地にピンクのリボンの着いたのがおすすめでござるが」 「まだやるって決めてないよ!?」 「やっぱり白が基本でござるね。あ、花柄もなかなか・・・」 「なんでそんな何枚も買って来るんだよお」 「もちろん団吾殿のためでござる」 「よく考えてよ。男が女性用のちいさなパンツはくなんて・・・ 気持ちわるくない?」 「だいじょうぶ。団吾殿のお尻は赤ちゃんクオリティで可愛いから、 小さい下着でも充分可愛いでござるよ」 「いつ見たの!?」 「それは企業秘密でござる」 ふふ、拙者のチラ見テクは高度ゆえ、鋭い団吾殿に視線は悟られはしても、 尻尾を掴まれることはないのでござるよ。 「ささ、時間がないでござるよ」 「うう・・・」 団吾殿、ものすごくいやそうにそれを受け取った。 「あ、その前にこれ」 「なにコレ?」 「剃刀でござる」 女性用のTの字のやつだからお肌にやさしいでござるよ。 「すごいいやな予感するんですけど・・・」 眉根を寄せる団吾殿もかわいいでござるねぇ。 そんな団吾殿に拙者はびしりと命令するでござる。 「首から下はとにかく全・部!剃る!つるつるにしなきゃならないんですぞ」 「えーーー?あそこも?」 「もちろんでござる!」 「御宅田くん、なにはりきってんの?(汗)」 え、そんなにはりきってたでござるか?これは失敗。 あくまで顔を引き締めて・・・。 「そこが一番重要なんでござるよ」 「えーー?見えないのに」 「見えないところに凝るのが乙女の身だしなみでござる。 オタクたるものそれくらい徹底しなければ」 拙者の断固とした口調に、団吾殿、 「・・・わかった」 と言ってがっくり首を垂れた。ああ、団吾殿・・・。 そのまま衣装と剃刀をもっておずおずとバスルームに向かう団吾殿。 もちろん拙者はここで待機でござるよ。 さすがに毛剃りプレイはしないでござる。 さすがにそこまでは・・・。 「・・・ねえ御宅田くん」 おや、バスルームから団吾殿の声が。 「なんでござる?」 「産毛もだめ?」 「産毛!!」 カーーッと頭に血が上ったでござる。 「うううう、産毛なんでござるかーーー!!?」 「なに興奮してんの(汗)」 「団吾殿、ぶっちゃけ、どどどれくらいははは生えてるんでござるか!!!? 拙者にだけ、ちょっとだけ教えてくだされ!!!!!」 あれ、拙者の動揺と団吾の冷静さの温度差がきついでござろうか。 「なんでまたそんなの知りたがるの(汗)」 「さささ、参考のためでござる!決して変な気持ちでは!!」 「変な気持ちってなんだよ(汗)」 しまった。ボロが出たでござるか。 団吾殿、日ごろの鍛錬でツッコミ慣れてきてるでござるね。 「まあべつにいいけどね。ほんとに知りたい?」 「し、知りたいでござる!」 「えーーっと、産毛が濃くなったようなのがちょろっとあるだけ」 団吾殿、絶対狙ってるでござろう?! でも釣られるでこざるよ。 かわいすぎっ!!! 「そ、それならべつに剃らなくても・・・」 「そう?良かった」 はぁ、心臓に悪い。しかし萌えた! 魔女っ娘コスに身を包んだ団吾殿は期待通りかわいらしかったでござる。 「しかし団吾殿」 「なに?」 「団吾殿はサバサバしてるでござるね!」 「男だからべつに普通だと思うけど」 「ますます好きになったでござるよ」 「そう。アリガト」 若干サバサバしすぎで、 拙者に気のないしるしという気もしないでござるけど、 (まあ気はないのでござろうけど) やっぱり団吾殿はいいでござる。最高だ! 「ところで、ボクにだけさせる気?」 「だって女装はかわいい方がしてこそ花でござるから」 「たまには一緒にしようよ」 む。新しい展開でござるね。 「今度一緒にセーラーポリスしよ」 団吾殿が望むならそれもありでござるよ。 「良かった」 一緒にできて、でござるか?団吾殿はかわいいでござるな。 「パンツ注文しなきゃね!ぴんくがいいかな?オレンジと黄色のチェックもかわいいし。 それとも思い切って黒?楽しみ!」 ええ!?でも・・・。 「本気で女装するなら基本でしょ?」 ・・・わかったでござる。武士に二言はないでござる。 そんな団吾殿も好きでござるよ。 |
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