要次日記


だから、悪気はなかったんだ。

オレは派遣組の床で一冊のノートを拾った。
で、それが、普通の大学ノートで無記名だったから、
まったく他意なんかなしで開いてみたんだ。

『5月25日 晴れ 

兄貴は今日も凛々しかった 
花に水をやっている俺に「要次はいつも感心じゃな」
と優しい言葉をかけてくれた。幸せ。』

まるでチッチとサリーの世界だ。
要次って、あの馬刺し君か。
乙女だよなぁとは思っていけど
これほどまでに可愛い世界に生きていたとは・・・。

まずいって。こんなんほかの舎弟に見つかったらからかわれるだろ。

オレはこっそり自分のバックに入れて持ち帰った。

自分の部屋に帰ってから、悪いと思いつつも好奇心に勝てず開いてしまった。
それは馬刺し君の兄貴観察日記のようだった。

『6月10日 雨
おしりペン道部のユニフォームがいやらしく見えるのはオレだけではないはずだ。
ケツだけ出すってどんなユニフォームなんだ。
大会ではみんな兄貴のケツに釘付けになるに違いない。
オレだって見る。ガン見だ。』

こらーーー!!
むっつりか!むっつりだったのか!
いや、これくらいで人の評価を変えるのは良くない。
気を取り直してページをめくる。

『6月15日 くもり
兄貴のケツはすごい!トゲだらけだ 
狂介のやつが、
「美味い物は固い殻に覆われている。兄貴の尻肉はよっぽど美味なんだな」
と言ってたが意味不明だ。
でもなんとなくほめられている気はするからよしとしよう。』

ほめてる・・・か?
まてよ、あの大会のときはどうだったんだろ・・・。


『5月20日 晴れ
兄貴の珍○はすごい!ふんどしがはちきれそうだ。
やっぱりビッグな男は○○○も違うんだな!』

うん、曇りのない純粋な目線が新鮮だよ。

『兄貴のチ○○はしばらく派遣組でネタにされてた。』

ああ・・・団吾かわいそうに。

『あんだけデカイとかえって不便なんじゃないかとか、
処女なんか絶対無理くさいとか。
そんな中、火讐だけは「無理じゃない!」と主張していたが
なぜだろう。』

・・・・・・深く考えることを脳が拒否するな。
とりあえず、無理じゃなくて良かったね、とだけ言っておこう。
はい、次。

『6月28日 雨
明日は討ち入りの日。
兄貴に「髪の毛、一本ください。お守りに」 
と言ったらぎゅっと抱きしめてくれた。
もう死んでもいいくらい幸せ。』

な、なにぃ!?あいつ抜け駆けしやがって!
まあ団吾の気持ちはわからないでもないけど・・・いじらしすぎるよな。
あれできゅるんとした外見だったらかえってマズかった。よかったよああで。

あ、そろそろ罪悪感が芽生えてきた。
このへんにしとこ・・・。

翌日、中なんて見てませんよという顔で返してやったら
お礼に兄貴マスコットもらった。
オレのケータイにぶら下がっているそれを見るたびにちょっと胸が痛む。

ごめんね、馬刺し君。
君の愛はホンモノだよ。




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