「次、お前の番」
「えーーー?腰痛いのに」
「情けねーな」
「火讐くんがガンガンつっこむから痛いんじゃない!」
なんてやりとりが何日も続き、しょうがないから、ということで、
日替わりというホンモノくさい仲になってしまいました。
今日はオレ、明日はお前、って、どんだけだよ・・・どんだけホンモノなんだよ・・・。
まあ、それはともかく、そんなわけで明日はボクの番。
「今夜は精のつくもん食べてよく寝るんだぞ!
満足させなきゃ承知しないからな!」
うう・・・火讐くん、ほんとに強くなったよ・・・。
ていうか、もともと強かったよね。
元ボクサーだけあって、基礎体力がハンパじゃないんだから。
この強い火讐くんを満足させるなんて、ボクにできるかなあ・・・。
うーん、案ずるより産むが安しだ。やってみよう。
「オイのこと考えながら自分でしてたのか?
この手で、中をいじくったりしてたのか・・・?」
「口調戻ってるぞ」
あ、つい、攻めだと兄貴になっちゃってた。
「思い出させるんじゃねえ・・・っ」
わ、火讐くん、ちょっと涙ぐんでる。
「火讐くん・・・ごめん」
今まで考えないようにしてきたけど。考えるのこわいから。
火讐くんの兄貴は二度と戻ってこないんだよね・・・。
御手洗団吾はいるけど、兄貴はもういない。
オタのボクを好きになってくれても、まるごと尊敬してた兄貴はもう、というか最初からいなかった。
愛した人が最初からいなかったなんてあんまり悲しすぎるよね・・・。
「あの・・・ボク、が、頑張るから。
素のボクでできるかどうかわかんないけど・・・やってみる!」
素のボクで攻め・・・・・・気弱オタク攻め・・・そんなん聞いたことないよ。どんなだ、どんなんなんだ!?
「あ、あの、きす、してもいい??」
「いちいち聞くなよ。恥ずかしいだろ」
あれ、これってただのヘタレ攻め?
「じゃ、じゃあ・・・ん・・・」
唇に軽いキス。
「へへ、火讐くん、赤くなってる。かわいい」
「ばか・・・さっさとやれ!」
ふふ。受けになるとやっぱり火讐くんはかわいいなあ。
「じゃあお言葉に甘えまして・・・服は脱ぐ?ボクが脱がす?」
「自分で脱げる!」
火讐くんがかわいいからなんか調子が出てきたぞ。
「ふふ。火讐くんはやっぱり綺麗だねぇ」
「なんだよいきなり」
「だって本当だもん。ボクの知ってる男の子の中でダントツで綺麗」
身体も心もね。
ボクだけが知ってるんだって思ったらやっぱりうれしくなっちゃう。
「すごく綺麗な筋肉のつきかたで・・・男でも、触ってみたくなっちゃう。
ねえ?触られたりしない?」
「しねーよ!」
「うそぉ。こんなに綺麗なのに」
「うっせ!綺麗綺麗言うな!キモチ悪い!」
「顔真っ赤だよ」
ほんとに照れ屋さんなんだから。
「ふふ。かーわいい」
ぎゅっと抱きしめちゃう。
「うう・・・」
「ねえ・・・」
「ん?」
「誘って」
「な!」
「ボクを、君の言葉で」
「な、ななななな」
火讐くん、口をパクパクしている。めったに見られないパニクリ顔だ。
「ばか!できるか!」
「あーーーずるい。ボクにはさんざん恥ずかしいことしたくせに!」
火讐くんも恥ずかしいことになっちゃえ!
「いいじゃん。お互い体の奥底まで掘り合った仲でしょ?」
あ、さりげなく下品なこと言っちゃった。まあいいかなこれくらい。
「言わないとしないよ?」
黙っている火讐くんにそう宣告すると、
「・・・一回だけだぞ」
観念したみたいだね。でも親の仇のように睨まないで。
「うんうん。さあ」
「・・・してくれ」
「違う違う。もっと色っぽく!」
この子はもう、手取り足取りだね。
「どんなんだよ」
「だ・か・ら、もじもじしながら上目遣いで、『抱いて?』と、こうだよ」
「あほかっ!」
身をくねらしたボクに容赦ない右ストレートが炸裂した。
「痛っ!」
君の拳は痴話喧嘩で使うべきじゃないよ!
「男がんなこと言えるかっ!
ああ、オレ、こんなヤツに・・・あーーー、最悪だ・・・」
火讐くん、頭を抱えちゃった。よっぽど情けなかったんだね。
「そんな今更・・・」
あれ、もしかしたら今言葉攻めのチャンスだった?
お互い経験不足だからうまくいかないんだね。
不器用ながらも一つずつスキルアップしていけばいいか。
「わかったよ、ごめん。もう言わないから許して。ね」
肩をやさしく抱いてささやく。
「そんなん火讐くんらしくないもんね。火讐くんは男前受けでなくっちゃ。
どうどうと裸になってドーンとボクにのしかかるくらいでなくちゃ」
「ほう。そういうのが望みか?」
「え!?違う。もののたとえであって・・・」
あれ?襲い受けにシフトした?早くも目がらんらんと輝いてますけど。
ガバッ、と肩を捕まれる。
結局いつもと同じー!?
「いやだよ!せっかくのチャンスなんだから!」
いつものオチだけはだめ!
ここで流されたら最後の一滴まで搾り取られる!それだけは!
「火讐くん、落ち着いて。ね」
噛み付きたそうに近づいてきた顔を寸前で押しとどめた。
両手で頬をつつみ、目を見てやさしく語りかける。
「ふつーのカップルみたいに、ゆっくりやろうよ。
ボクは、できれば君の心ごと抱きたいんだから・・・だめかな?」
「団吾・・・」
「君との行為が、ただ性欲だけのものになるなんていやだもの・・・」
「・・・かっこいい・・・」
「え?」
「クソ・・・オタのくせにかっこいいぜてめーは!」
「なに怒ってるの!ヘンな子だねえ」
頭を撫で撫でしてあげる。
「でも、かわいいよ」
ほっぺにキス。
「うー・・・」
「ボクのかわいい猛獣ちゃん、うんとかわいがってあげる・・・
君が溶けてなくなっちゃうくらい・・・」
顔中にキスの雨を降らせると、すぐに火讐くんの体から力が抜け、おとなしくボクに身を預けてくる。
「兄貴はいた」
「火讐くん?」
「兄貴はいつだって団吾だった。消えてなんかなかった」
ぎゅっとすがるように抱きついてくる。
「声、ちょっとトーンは高めだけど、耳にすごく気持ちいい・・・」
「そうか・・・」
「もっと聞かせてくれ」
「ん・・・好き」
「オレも・・・」
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「どうだった?」
終わった後、おずおずと尋ねるボクに火讐くん、
「最高」
と答えてくれた。
ほんと!?
「ああ、大きさより技、技より愛情だからな!」
「それ誉めてる!?」
「誉めてるぜ。すげぇ誉めてる」
「そうかなぁ」
まあ、愛情は伝わったってことだろうけど・・・。
「やっぱり団吾は最高だ」
そう言ってにっこり笑う火讐くんの顔がかわいくて涙が出そうになる。
ああ、胸もじーんとしてる・・・がんばった甲斐があったよお。
安心した。安心して経験値を積んでいける。
きっと未来は明るい。
なんだかんだありつつ、ボクたち、ちゃんとうまいことやっていけそうです。
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