思い出語り


ここだけの話、火讐くんって、いつもえらそうに挑んでくるくせに、
いざはじまると(オタのボクが知るはずもないのであくまで比喩ですが)
バージンのように固くなってたんですよ。

「どうした?そんなにガチガチに固くして・・・」

って尋ねたら、火讐くん、ぽつりとつぶやくようにこう言ったんだ。

「兄貴にしてもらってるのが申し訳なくて・・・」

って!
これだけでもグっとくるのに、さらにこう畳み掛けるんだよ。

「優しくしないで・・・もっと乱暴にして・・・」
「かしゅう・・・」
「オレなんかに・・・そんなに気を使わないで」 

こんなこと言われたらもうダメでしょ!
男冥利に尽きるにも程がある!

「ばか。乱暴になんかできるかっ」

抱きしめずにいられないよ、もう。

「あにき・・・」

兄貴に対する火讐くんはほんとうにどこまでも健気なんだから。

「こんなにかわいいお前を・・・かしゅう、お前、食べてしまいたい・・・」
「食べて・・・全部食べて兄貴のものにしてっ」

・・・なんてことは言いません。火讐くんだもの。

「こんな固い体を愛してもらってるのが信じられなくて・・・」

代わりにどこまでもしおらしくこうくるの。たまらん。

「何を言う・・・お前は綺麗だぞ。ほかの誰より綺麗だ」
「あにき」
「お前の体だから、こんなに綺麗なんだ・・・」

わ、こういう時の会話って後から思い出すとすごい恥ずかしいな!

「でも、こんなん・・・」
「もう黙れ。これを見ればわかるじゃろう」
「あ、兄貴、兄貴の・・・」

火讐くんの顔がぱっと明るくなって・・・
こういうときに出てくる言葉はだいたい想像付くよね?

「兄貴のちっさくてかわいい珍が・・・ちっさいながらもけなげにたってる・・・」

こんなこと言われたら情事は台無しだよ・・・。普通は。

「兄貴・・・好き・・・」

でも、萎えないんだな。
ボクがMだからって?違う違う。
台無しだけど、愛が詰まっているから萎えないんです。

「ちいさくて可愛いのが健気に精一杯猛っているのがすごくいとおしい・・・」

でも、そんなに長々と解説する必要はなかったかな・・・(泣)
受けはマグロはいかん。
せめて自分の体や気持ちの変化を伝える努力くらいしないとって
聞いたことあるけど、程があるよね。

で、まあ、終わってから「どうしたんじゃ一体」って聞いたら
火讐くん、またしゅんとして

「舎弟のヤツが・・・男と抱き合うなんて気持ち悪いって・・・」

なんてこと言うんだよ。

「ヤツぱり、兄貴もいやなんじゃないかって・・・オレが無理させてるんじゃ・・・」

火讐くん健気過ぎるよね・・・!
そんなわけないのにいい子だよ!

「つっこむだけならともかく、裸で抱き合うなんてキモいって」
「酷いヤツじゃな」
「気持ち悪くないすか?」
「お前は気持ち悪いか?」
「いえ」
「そうじゃろ。こんなに気持ちいい」

そこでまだ情事の熱の残った体をぎゅっと抱きしめるんだ。

「そういうこと言うヤツは人を好きになったことないんじゃ。
言いたいヤツには言わせとけ」

ほんとにね、幸せな体温って感じ。

「兄貴・・・うれしいっす」

すりついてくる火讐くんの頭をよしよしと撫でてあげたの。
普段は固そうに見える髪も下ろすと猫ッ毛でふわふわ。

「ほんとにキモチイイ・・・お前の前世は猫だったのかもしれんぞ」
「兄貴の猫にならなりたいっす」

なんて、ほんとに猫みたいにごろにゃんと甘えてきて、
ああ、ほんっとうにかわいかった。
そんな時代もあったなあ・・・。

「今は可愛げがないみたいっすね」

いや、「一家に一匹兄貴の珍」なんて言ってもてあそんだりしなかったでしょ、あの頃は・・・。

「オレは今でも十分兄貴を愛してるっすけど。こいつも含めて」
「ちょ、照れ隠しにひねり潰すのやめてっ。死ぬからっ」
「照れ隠しじゃない!」
「痛い痛い痛いっ。君は今でもかわいい子ですからっ」
「兄貴のバカっ」



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