理屈なんかどうでもいいよ


君はへらへらした男なんて軟弱だと言う。

いつも笑っている男がいいなんていう女はおかしい。
笑顔の安売りは自信のなさの表れだってことくらいわかりそうなものだ。
気弱そうな笑みを浮かべ、へつらった態度をとる男なんて
見ただけで殴りたくなる。
とくにあのオタクども。

吐き捨てるようにそう語ったのはほんの一ヶ月程前のことなのに。

うん、まったくそのとおりだと思うよ。
男は硬派でないと。男は自信を持ってないと。

なのに、君はまだボクが好きだと言う。

「ボクなんて軟弱男の代表格だけど」
「兄貴は違いますよ」

違わない、違わない。

「兄貴の笑顔は癒しですから」
「それってかなり主観的な意見じゃない?」
「あたりまえです」
「あたりまえって」
「オレは兄貴が好きなんだから兄貴が特別なのは当然です」

うーん。火讐くんはいつもストレートだなあ。

「それに、兄貴は軟弱男なんかじゃないです。
オレを救ってくれた強い男です」

だから、それは君の妄想と勘違い・・・
って、何回言っても納得しないよね。
君はそういう子だよね。よくわかってる。

「もう、どうでもいいです。兄貴なら」
「どうでもって」
「理屈なんか犬に食わせてやればいい」

ヤンキーさんらしいなぁ。
そのいい意味での単純さ、オタにはマネできないよ。

かく言うボクも、君といられれば理屈なんかどうでもいいところまで
きちゃっているんだけど。

まあ、とりあえずは、

「火讐くん」

膝の上のオレンジ色の頭をそっと撫でてあげる。

「来年もよろしく」
「こちらこそ」

頭を上げて、うれしそうに笑った顔はとっても綺麗。
ボクも笑い返す。
恋人の笑顔だけは値千金・・・のハズ。

ボクと君がこういう仲になることで、
ボクの世界も広がって、たぶん君の世界も広がった。
これは十分意味のあることだと思わない?





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