アヤコさん(仮名)旋風
「聞いたわよ、番長さん」 ボクの両手をしっかり握っているのは音入れ部のアヤコさん(仮名)。 「舎弟達全員とガチホモってるんですってね!おめでとう!」 「おめでたいの!?ていうか、ガセだし!」 「んもう、なぜ早く私に言ってくれないのかしら!」 この人も人の話を聞かない人だなあ。 ボクの周りってなんでこんななんだろ・・・うう、 「今日はぜひ番長さんに熟練のテクニックを披露してもらいたくて来たの」 見ると、既にマイクとカセットでしっかりスタンバッてる。 「残念じゃが、オイはちと用事が・・・」 「番長さん、派遣切りには賛成?反対?」 「もちろん反対じゃ」 「だと思った。じゃあ協力してくれるわよね」 「へ」 「新入生歓迎会での演劇部の演目ね、『蟹工船』なの! 今だから伝えたい。若さではちきれそうなフレッシュくん達にこそ。 わかってくれるわよね!?」 「わ、わからないでもないが」 「さすが!あ、卑猥トークはあとで舎弟のみなさん、お願いね☆」 ブーイングの声も力ない。 アヤコさんの恐ろしさは一度で十分身に染みたからね・・・。 ていうか、まだ懲りずにこの人に頼んでる演劇部の皆さんって、どんだけドM!? 「そういうことで、番長さんにお願いしたいのは食事のシーン。 いい、思い切り猥雑に、よ。これを使って」 そ、それは・・・バナナですね。立派に反り返った。 「舐めるのよ。ピチャピチャいやらしい音を立てながら!」 やっぱり! これって派遣切り関係ない・・・そう思いながらも指示に従う。 「ああ、番長さんのピンクのかわいい舌がレロレロとバナナを這い上がって・・・」 恥ずかしいから解説しないで! 唾液はぽたぽた落ちるし、きっとすごくみっともない顔になってる。 みんなの視線を感じるし泣きそうだよ。 舌が痺れてきた・・・もうやめていいかな? ちらっと薄目をあけると、紅潮した顔のアヤコさんが熱っぽく囁いた。 「まだ食べちゃだめ・・・」 う、いやらしい。 「今度はチュパチュパ吸って」 「てめぇ、兄貴に卑猥なことさせんじゃねえ!!」 「卑猥じゃないの!これは芸術よ!」 火讐くん相手に一歩も引かないのってこのアヤコさんくらいだよ。 ていうか、火讐くん、止めるならもっと早く(泣) 「はーい。いい音頂きました!」 ようやくお許しが出て、口を離す。 へなへなになったバナナはビニール袋に捨てるように言われてほっとする。 その矢先にこれ。 「次はこのショートケーキを」 「まだやるのー!?」 「芸術のためよ!」 嘘だぁ。100%自分の趣味だぁ。 「あ、食べちゃだめ!舐めるの!そう・・・レロレロと・・・」 目を閉じ、お姉さんのひそめたやさしい声だけ聞いていると、 アヤコさんって、折笠愛さん似のセクシーボイスで、 なんか、この状況、興奮してきた、かも・・・。 「まず周りのクリームからね。塗り絵を塗るように舐めとって、それからイチゴよ! いい?メインは最後!」 「ちょ、なにしてやがる!」 火讐くんの声に迫力がないぞ。 見ると真っ赤になって口を押さえている。 「いくらなんでも卑猥だろ・・・」 紋武くんも困ったようななんともいえない顔をしている。 こんなふたりの顔って新鮮かも。 「男性向けだけでは公平じゃないからね!女性客にも喜んでもらわないと」 違う趣旨になってる!ていうか、欲望丸出し! 「ああーーん、もっともっと焦らしてぇーーー」 なに、この羞恥プレイ・・・。 「はい、カーーーット!いい音奏でてくれるじゃないの!」 お、終わった・・・今度こそアヤコさんも満足そう。 「兄貴、口の周りべとべと」 「む?」 ハンカチを取り出す前に火讐くんが顔を近づけて ぺろっ 「ちょ!」 火讐くん、甘いもの苦手なのに! それより人前なのに!いくら最近はオープンだからってこんな! 「まだついてる」 「む、むぐっ」 なおもむしゃぶりついてくる火讐くん。 そうとう興奮していたみたい。 「そう!そこでクリーム味のするキス!わかってきたじゃないのあんた達も!」 アヤコさんも興奮しまくり叫びまくり。 実は、ボクも、なんだけど・・・ああーーーー・・・。 「だれかバナナつき立ててくれる人いないの!?」 「いや、それは、さすがに・・・」 「プチトマトならここにありますが」 「トマトじゃとてもとても物足りない!バナナよバナナ!」 「バナナ卑猥!」 「バナナ最高!」 この人って、案外今の派遣組にマッチしているかもしれないね・・・(遠い目) |