サプライズはどこにでも潜んでいる。
はじめて訪れた恋人の部屋にも。
「火讐くん・・・これ・・・」
壁一面に兄貴ブロマイド。
「いつも見ていたいんす、男らしい兄貴の姿」
そんなこと言って、親御さん心配するでしょ。
しかも、一番目立つところに張っているのが
「いや、これはこれで・・・男らしいかなぁと・・・」
大きく引き伸ばされたデカ珍を抱える兄貴。
「あ、実際ののほうが実用向きっすよ?」
なんてフォローされてもうれしくないから。
「これじゃさすがに・・・うん、無理っすから」
そうだよね、ボクもそう思うよ。だったらなんでこんなもの。
「でも、今見ても惚れ惚れするくらい男らしいっす・・・
いや、オレはナマの兄貴が一番っすけど」
もういい、聞きたくない、聞きたくないから。
「オレは兄貴写真集の一番の愛読者っすよ」
本棚のこれね。五冊も出ていたなんて知らなかったよ。
また、舎弟は喜んでたけどボク自身は思い出したくないような
ネタばっかりよりすぐって・・・
あれ?
「かしゅうくん・・・なんか・・・
くっついて開けないページがあるんだけど・・・」
「そ、それは・・・その、メシ食いながら見てて、飯粒落ちて・・・」
・・・・・・・・・かしゅうくん・・・。
君でもするんだね、そんな中学男子のような言い訳。
「一回だけ、一回だけ出来心で!申し訳ないっす!」
土下座するほどのことじゃないんだよ。
「・・・かしゅうくん・・・いいんだよ、ボクだって・・・」
「え!」
「君を・・・妄想の中で何度・・・」
「兄貴・・・オレにどんなことさせてたんです?」
さすがに口には出しづらい。
ボクら、まだ、ほんのすこししか触れ合ってないんだもの。
「その、咥えたり?」
「・・・妄想だもん・・・」
「やっぱり!」
「ごめんね・・・」
「いいんす。オレなんて兄貴に・・・」
「え・・・!?なんで切るの!?」
「兄貴に・・・・・・だめだ。とても言えないっす・・・」
言ってる内容とは裏腹に、すごくうれしそうなのが気にかかる。
「いいいい、言ってよおおおお」
「聞きたいっすか?ほんとうに?」
「う・・・う・・・」
「だめだ!とても!」
「あああああ怖いよおおおお」
聞いたら後悔しそうだもの。
「兄貴・・・そんな、そんな、妄想なんて・・・しないでも・・・
言ってくれたらいつでもオレ・・・」
え?この展開は、まさか。
「兄貴になら、性欲処理だけでも良かったんです」
可愛いよ、可愛いよ火讐くん・・・!なんてけなげな可愛い子なの・・・!
「でも・・・兄貴はそんなことする人じゃないってわかったから・・・
ちゃんと待とうって・・・兄貴にオレを好きになってもらおうって思ったんです」
ほろりときちゃう。
「兄貴・・・良かったらオレを・・・好きにしてくだせえ」
きっぱりと、ボクの目を見て。こんなときでも火讐くんは凛々しい。
「兄貴の思うとおりに・・・この体を。
どんなふうに扱われても、オレはうれしいですから・・・」
けなげ過ぎる・・・!
「兄貴・・・」
そ、そんな目でみないでよお・・・だめ。
で、ご想像どおり、流されました。
終わった後、
「かしゅうくん、ボクになにさせてたの?」
って聞いてみたら、
「・・・・・・・・・さっきしてくれたようなことっす」
だって。間が怪しすぎるよ。
「ほんとー?してほしいことあったら言ってよー」
「いいんす!そのうちで」
「そのうちってやっぱり!?」
何をさせる気なの!
すごくアブノーマルなプレイだったりするのかな。
不安な気もするけど、火讐くんがすごくいきいきしてるから、
なんだか楽しくなってきちゃった。
「どんな妄想よりナマの兄貴がいい」
ボクもだよ。
オタもヤンキーも年頃だから妄想するけどね、
現実の、抱きしめたらギュッと抱きしめ返してくれる恋人が最高です。
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