たまにはこんなふたりでも
「そういえば火讐くん」 「なんすか」 「君、チョコたんの本読んで研究してたって? 『おチンチンを可愛がろう』とかいう特集の・・・」 ネットで調べたんだけど、忘れようにも忘れられない酷さだった。 少女漫画の絵で、しかもオールカラーで、『おチンチンを可愛がろう』だよ。 「研究するつもりはなかったんすけど、見てるとなんか興奮しちまって。 兄貴のをする想像しながらひとりで抜いてしまいました」 火讐くん、素直に答えすぎです! そりゃあ、ボクだってちょっと、へんな気になっちゃったけど・・・。 「ばか・・・」 「むずむずして」 「ばか・・・」 でもそんな火讐くんが可愛いな。 「兄貴は・・・?」 「ん、ボク?」 「兄貴はヌかないんすか」 「えーー・・・あはは」 笑ってもごまかしきれないよね。 「やっぱり、同人誌ってやつすか?女同士の」 「ち、違うよ!百合は神聖なの!そんなことに使いません」 「じゃあなんで」 「・・・君ですることもあるよ」 大胆すぎたかな? 「あ、君が神聖じゃないって意味じゃないからね」 そんな言い訳は必要なかった。 「兄貴、そんな妄想なんかしなくても、したいことがあったらなんでも言ってください。 『あにきのお珍珍はむって咥えます』とかいいましようか?」 火讐くん・・・君はどこまで真面目なんですか。 「だから、そういうんじゃなくて・・・もっとこう、奥ゆかしく、恥らってほしいときもあるんだよ」 「あにき・・・やさしくしてくだせぇ・・・」 「急に言われても気味悪いよ」 ボクってこんなにわがままだったっけ。 「火讐くんでも恥ずかしいことってあるの?」 「特にないっす。兄貴との営みなら舎弟たちに見られても構いませんし!」 うん、それは本当だろうね。 でも。 「うそ」 「うそ?」 「火讐くんストイックだから、我を忘れて喘ぐのなんてイヤでしょ。 自分を見失わないようにセーブしてるでしょ」 いつかは言おうと思っていたことをついに言っちゃった。 火讐くん、どう出るかな。 「さすが兄貴」 意外なくらいすんなりと認めた。 「ね、火讐くん」 じっと見つめる。 「技なんか全然要らないから、ボクに全部任せて。ボクを信じて」 声に誠意を込めて語りかける。 「どんな君を見ても嫌いになったりしないから」 火讐くんの瞳が揺れた。 「兄貴・・・いや、でも」 「君らしくないよ『でも』なんて」 容赦なく追い詰める。 「兄貴命令です。理性は捨てなさい」 ボクって残酷かな。 兄貴の命令に逆らえるはずないってことわかってるのに。 「男はね、好きな人が自分に夢中になってくれたらうれしいの。 君だってそうでしょ」 「はい。でも」 「でもじゃない!」 いつもとは違う。ボクももう引けない。 「君のかわいいとこ、見せて」 「う・・・」 「返事は?」 「・・・ウッス」 「よし。男らしい」 にっこり笑って頭をなでてあげる。 火讐くんはボクの腕の中で神妙にしていた。 その後は、しっぽりいきました。 火讐くん、ずっと横を向いたまま、ボクに顔を見せてくれない。 引き寄せようとすると、腕を突っ張って嫌がった。 「見ないでくだせぇ」 それでも引き寄せると、真っ赤になった顔を手で隠そうとする。 「オレ、兄貴に合わせる顔なんて・・・」 涙まで浮かべている。 やみつきになりそう。 普段ツンツンしているあのこが弱いところを見せてくれたよ。 かわいくないはずがない! 「あああああああ萌え!!!」 「兄貴?」 「いや、萌えは性欲を含んじゃいけないからこれは萌えじゃない! 萌えじゃなくて燃えだ!」 膨張率最大になるのは同人誌見ている時としか思えない、 なんて言われるボクでも、するときはするんです。 最大かどうかはわかんないけど。それなりに。 「兄貴、親御さんがくる・・・」 「いいの!テレビって言うから!」 いつもと立場が逆だけど、いいでしょ。 たまにはこんなふたりでも。 ああ、幸せすぎて怖い。 |