契 


「兄貴と義兄弟になりたいっす!」

うん。とっても火讐くんらしい発言だと思うけど、突然なに?

「血をすすりあって・・・」
「キモチ悪いよ!どこで覚えたの!?」
「紋武に借りた三国志に書いてました」

ちゃっかり貸し借りしてるんだ。ちょっとやけるなあ。

「血って、血液型が違うと混ざらないよ」
「兄貴詳しいすね」
「う」

いえない・・・。
猟奇殺人モノのラノベに書いてあったなんて・・・。

「そんなことしなくても義兄弟くらいにはなってる感じだけど」

特に深く考えたわけでもない、気まぐれな台詞に、
火讐くんの表情がまるで子どものようにぱっと明るくなる。

「そうすか」

なんてなんてなんて素直なの君はっ。
衝動的にぎゅうっと抱きしめてしまう。

「お嫁さんにしてあげられたらいいのに。いや、むしろボクがお嫁さんでも」
「なに言ってんすか兄貴」

不思議そうな顔。

「あ、ごめん。つい激情に刈られて」

はっと我に返って体を離す。

「良く考えると、生身の人間に向かってお嫁さんにしてあげるなんて
えらそうにも程があるよね。
そんな甲斐性あるつもりなんだろーか。うわ、痛々しいっっ。忘れてっ」
「兄貴がそう言うなら忘れますけど、嬉しかったですよ」
「ええー」
「○○はオレの嫁!とかいうあれですね。萌えとはどこが違うんすか」
「うーん。より、自分だけのものにしたいってことかな」
「それならもうなってますよ」
「火讐くん!」

ヒシ、と抱き合う。なにこのふたり。

「オレがヘンなこと言い出したからヘンな話になっちゃいましたね。すいません」
「あ、いや。すぐ嫁とか言い出すのオタクのサガだからっ。悪いのボクだから」
「兄貴」

ボクの腕の中で、火讐くんは眉を寄せ、
申し訳なさそうに、はにかむように笑った。

「あんま気、つかわんでください。
オレはもう、兄貴から十分すぎるくらいもらってます。
これ以上もらったらバチがあたる」

うう、健気すぎるっっ。
サラシを厚く巻いた固い手を両手で握り締め、力を込める。

「火讐くん、生まれたときは違えども、死ぬときはともに、ね」
「光栄っす」
「血、すすりあおうか」
「気持ち悪いからいやです」
「言ってること違う!!」
「うっかり勘違いしてやした。鶏の血だったっす。兄貴、飲みやす?」
「・・・遠慮します」





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