ママンも反撃する
「じゃあ、火讐くん」 今まさに、お風呂で一戦交わされようとしていた。 きっかけは、ボクのなにげない一言。 そんな昔のじゃない、奥付見たら平成9年の小説読んでたら、当時はローションやジェルの代わりにいちじく浣腸の中身を使ってたという恐ろしい記述にぶつかった。 まあ、もちろん、外国にはあったんだろうけど、日本では手に入りにくかったんだろうな。 すべりを良くするためにいちじく浣腸なんて、場所が場所ならたいへんなことになりそう、って火讐くんに笑って言ったら、 「なかったらなかったで、石鹸なり、サラダ油なり使うと思います」 て、極真面目な顔で言うんだよ。 そんな指輪が抜けないみたいな、って言い返したら、いやに身を乗り出して、 「でも、そんなことしてまで尻の穴にちんこを入れたいって、変態的で興奮しませんか?」 なんて言うんだから。 そんなことは・・・ないことも・・・ってふたり顔を見合わせてドキドキしちゃって。 で、ふたりで台所に行って、 何かに使えるかと(オタクはマメだ)100円ショップで買ってきた小瓶に、使えそうなシロモノをすこしずつ取ってきたりして・・・。 「バターは定番だよね」 「あと、サラダ油」 「オリーブオイルのほうが健康も地球にも優しいです。もちろん、尻にも・・・」 そんなわけで。 ベッドじゃバスタオル引いてもべたべたになりそうだから、 今日はお風呂場で、ってことになったんだ・・・。 「じゃあ、火讐くんのひきしまった小尻のオリーブオイルがけ・・・」 手を合わせて、いただきます、をするボク。 火讐くんはといえば、おとなしく俎板の鯉に・・・なってるはずもなく・・・。 「こっちも兄貴のふんわりまるいお尻のとろとろのはちみつがけ・・・」 ちょっと!何時の間に背後を取ったの。これ相撲じゃないから。 「お互いお尻にかけてどうするの!!」 「紋武でも呼びましょうか?」 「火讐くん!!」 「嘘ですよ、嘘。なに怒ってるんですか」 そういうことけろりとした顔で言うかなあ・・・。 「紋武にちゃっちゃっと掘ってもらって次のプレイにうつろうかと思ったのに」 ああ、ほんとになんてことないのね。 火讐くん的には道具取ってきましょうかぐらいのニュアンスなのね・・・。 それはそれで紋武くんがかわいそう。笑えるけど(酷い) 「では、ふんわり食感のホットケーキみたいな兄貴いただきやす」 あれ?何時の間に火讐くんが先になったの? やっぱり早い者勝ち? 「ホットケーキにナイフを入れますよ・・・」 あわあわしているボクのお尻を、火讐くんの手のひらが包む。 「うーん、うまそう・・・」 なでまわし、やわらかく揉み解してから、甘い声で囁かれる。 「ふっくらあまーいケーキにざっくり・・・」 きゅっと目を閉じて、「ざっくり」、と頭の中で繰り返す。 そうすると、本当にナイフが入れられたような気がする。 ボクの中を切り裂くやさしくてあったかいナイフ。 「ほら、バターが出てきた。とろとろ・・・」 すこしうわずった低い声が心地よく耳を浸す。 「か、かしゅうくん・・・とけちゃいそ」 「あにきの中も溶けそうに熱いです。このケーキ最高」 あったかいナイフがボクの中を抉り、捏ね回す。 心地よさに頭がぼうっとしてきた頃、奥深くで最後の一撃が放たれた。 「ふう」 「はあ・・・」 しばらく目を閉じたまま、快楽の余韻に浸る。 「兄貴のケーキごちそさんでした!」 うわー、余韻が台無しだよ! 「う、う、そんな、軽く・・・」 「兄貴どうしたんす」 「もうボクのお尻の貞操なんてないも同然なんだっ」 いや、ほんとうに今更だけどね。 あたりまえのようにお尻を掘りあってる状況が、時々すごく悲しくなるの。 「そんなことありやせん。兄貴のお尻はすべての衆生を受け入れる千手観音のような尻です」 そしてそのたびに君は熱心に語ってボクを説得しようとしてくれるね。 そういうところが好きだよ。言ってることが無茶苦茶でも。 「尊い、拝みたくなるような尻です」 「かしゅうくん・・・よくわかんないけど、誉めてくれてるのは伝わるよ・・・」 「誉めてます。この上なく」 こんな誉め方をされるの、世界中でボクしかいないよねえ。 「じゃあ兄貴のあとでは甚だお粗末ですが、オレの尻を献上します」 そう雄雄しく宣言してボクにお尻を向ける火讐くん。 「お粗末だなんてことないけど、うん、ありがたく頂きます・・・」 ボクも気を取り直して、(いい加減慣れましたから)相変わらず固く引き締まった、でも色艶も感触も申し分のないお尻をてのひらで堪能してから、おもむろに進撃を開始した。 「火讐くんのお尻は・・・うん、ピリリとスパイスの効いたエスニック料理だね」 ボク、甘党だけど、最近は辛ものの良さにも目覚めてきたみたい。 きっと火讐くんのおかげ。 そのへんのツンデレなんかより、もっとずっとスパイスの効いた火讐くん。 「熱くて、辛くて、全員がぽっぽっと火照って、すごく美味しい」 「光栄っす、兄貴!」 「はあ、気持ちよくて、すぐイっちゃう」 「イってください!オレの中に、兄貴の種を!!」 普通に考えると、長持ちするほうがいいだろうに、 (だって気持ちよくなる暇がないんだから) 火讐くんはいつもそう言ってくれる。 ボクはいつもその言葉に甘えてしまう。 「兄貴の種はまるで赤唐辛子の種・・・オレの中に染み渡ります」 心から満足そうに、そんなことまで。 「火讐くん・・・なんて健気なの・・・好きっ」 「オレもっ」 そのとき、ボクたちは知る由もなかったんだ。 たまたま隣の部屋のベランダで洗濯物を干していたお母さんが、一部始終を耳に入れていたことなど・・・。 ボクらの変態的なプレイに驚愕したお母さん、 いつものようにみのさんに相談しようと台所に向かったけれど、 みのさんは既にお昼の番組を引退していたからさあ大変。 どうしよう、このままでは爆発すると迷ったあげく、 「今日はお互いのお尻を食べ物にたとえて誉めあっていました。」 今流行りのブログに記すことで落ち着いたらしい。 タイトルは『息子がホモに走ったようです』。 思えばまさにネタの宝庫なわけで、たちまち人気サイトに出世したのだとか・・・。 て、実はボクも先日、偶然見つけて死にたくなっちゃったんだけどね。 発散する場は必要だろうし、第一元凶は自分だし、匿名なんだからまあいいかな、って自分を納得させたんだ。 今では一日1万ヒット超えてるそうで、出版のオファーも来てるとか来てないとか・・・。 もうね、どうしよう(汗) |