ピアス 火栗編


「お前マゾか」

火讐は心底あきれたような顔をしている。

「見ただけで痛そうだ。どうしようもない不良だな」
「お前だってしてるだろ」
「こんなとこにはしてねーよ」

シルバーのバーベルが乳首を貫き、両端にはやはりシルバーのリングが留められている。
オレの胸に光るピアスを睨みつけながら火讐はオレにつかつかと近寄ると、

「触っていいか?」

返事を待たずにリングを摘み、ぐいぐいと引っ張り始めた。
そのたびに刺すような痛みが走り、オレは顔をしかめてしまった。

「あ、ちょ・・・遠慮ねぇな・・・」
「そんなこと言ってそのふくらみはなんだ」

左手がズボンのファスナー部分に置かれる。

「こっちもビンビンだ・・・」

言いながらぐりぐり指を回す。
そうして至近距離でオレを睨んで、

「ドM野郎め」

とあざ笑う。
いい顔だ。その顔を見ただけで何回でもいけそう。
こんなモンでも入れた甲斐があったってもんだ。

「今日はどんな醜態さらす気だよ」

リングごとオレの乳首を弄びながら、気のない顔で、心底どうでもいい風にそう言い捨てる。

気が向いたときだけ、犬に肉でも放るように与えられるこいつの欲望をオレは待ち望んでいる。
キスひとつ与えられるわけではない。
蔑んだ視線と言葉。でもそれが一番気持ちイイ。

冷たい腰を落として、自分の欲望に手をあてがう。
快感に自然に目が閉じそうになるのを我慢して、オレを見下ろすヤツの顔に視点を定める。
ヤツの表情の変化を見のがさないようにする。
少しでも多く、余すところなく、快感を搾り取るために。

ドMとドSでいいコンビだよな。オレら。
イった後にそう言ってやったら、顔をしかめて、
「お前と一緒にするな」
なんて言いやがるの。同じ穴のムジナだろ、まったく。
ああサイコウ。




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