ツンデレな彼氏 


「早く来いっつってんだよ!!」

まったく、こいつはこんなときでも威張ってやがる。

「なに、お前、したいの?」

と、とぼけた顔で聞いてやれば、

「し、したくないっ」

噛み付くように返してくる。この天邪鬼。

「ほんとに?」

念を押したら、

「・・・してぇよ、悪いかっ」 

ヤバい、にやにやが止まらねぇ。
オレだいぶ意地悪だけど、お前がそうさせてるんだよ。

「どうしよっかなー」
「焦らすなばか!」

ついに痺れを切らして襲いかかってきた。
のしかかってくる細い体を両手で受け止める。
ベッドに重なり合い、息がかかる距離で見詰め合う。

「れーたん」

囁くと、長いまつげがゆっくり動いた。

「キスが上手くなったな・・・悪いやつだ」
「お前が、教えたんだろ・・・」

耳に、首に、キスしながら、薄く綺麗に肉のついた胸に手のひらを這わせる。

「ふぁ・・・」
「ちくび、感じるの?」
「いちいち聞くなっ!黙ってやれっ」

黙ったら黙ったで「黙るな」って怒るくせに。

「はいはい」

どうしても緩みそうになる頬にぐっと力を入れ、あやすように抱きしめて頭を撫でてやる。
火讐は最初はいやいやと首を振っていたのに、気持ちよさそうに擦り寄ってきた。
ほんとに猫。

「はぁ・・・」

ズボンの前をさすると、オレの胸の中で悩ましい吐息を漏らしはじめる。

「キモチいい?」
「しつこい。オヤジかてめーはっ」

どうもこいつは甘い雰囲気に向いてない。
カチンときたので、一旦体を離し、
いぶかしげな顔をするこいつに意趣返しのつもりで何度も発した問いをもう一度繰り返す。

「御手洗に悪いんじゃないか?」
「兄貴は尊敬」

やっぱり答えはいつもと同じ。本当かどうかはわからない。

「お前こそ、男なんかとこんなことしていいのか」
「お前女よりかわいいからいいんだよ」

ふざけるな、と軽く小突かれる。

「かわいいって」
「うるせえ」
「れーたんかわいい」

じゃれるように、態勢を変えて組み敷いた格好になる。
つりあがった大きな目に間近でじっと見詰められる。
月並みなたとえだけど、吸い込まれそうな目。

「マジでさ」
「ん」
「お前のかわいさは異常」
「よく言う」
「お前もな」

万が一、いや、千?いやいやこいつの場合百くらいか。
身代わりでもオレは構わねぇ。
とりあえず今はこの手の中の駄々っ子がかわいくて仕方ないから。




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