悪い男
紋武くんが、アイスを舐めている。 バッチリ周囲の視線を意識して、 挑発的としか言いようのない仕草で。 あんまりエロっぽいもんで、別に見るつもりもなかったけど、チラチラ見ちゃう。 やだなあ。うずうずしてきそう。 「お」 ボクは知らないふりをしていたけど、ボクの後ろでどうどうと見ていた火讐くんとは目が合ったらしい。 「お前も舐めてみろ」 そう言って火讐くんを手まねきした。 なぜかおとなしく席を立つ火讐くん。 「棒、よこせよ」 「このままだ」 棒は紋武くんがしっかり握ったまま。 火讐くん、なにを思ったのか、しゃがんで紋武くんの前に膝に手をつく。 ちょうどイヌのように顔を突き出す格好になる。 「はぐ・・・」 「あ、噛むな。・・・歯は、立てちゃいけねぇ」 素直に桃色の舌を伸ばす火讐くん。 「もっと舌、使え・・・」 アイスの冷たさで舌が真っ赤になっている。 「そう、上手いぞ」 「甘・・・」 不意に、火讐くんが顔を離した。 「練乳出てきた・・・」 「飲んじまえ」 ごくり、と音をたてて喉が動く。 「よし、いい子だ」 火讐くん、髪を撫でる紋武くんを上目遣いに見上げている。 「味はどうだ」 頬は紅潮し、口元は白いものでべたべた。 その姿で、いつになく従順に。 「飲みにくいけど、美味しい、です・・・」 「なにやってるの君たち」 さすがにつっこむべきだろう、これは。 「公開セクハラはやめてよ。ここ若い男ばっかりなんだから目の毒でしょ!」 「兄貴に興奮してもらいたくて」 「いや、わかってるから!わかってるけど・・・ ちょっと、なに火讐くんの指舐めてるの!ボクの前でやめてよねっ」 「ヤキモチやいてる兄貴萌えるっす!」 「火讐くんのばか!」 ひとりで騒いでるボクと裏腹に、舎弟くんたちは「いいもの見せてもらった」と満足そう。 正則くんなんてしみじみと、 「紋武兄さんはエロ伝道師だな」 だって。 ほんとにそうだよ!でも、悪い男! |