あきらめないぞ!
即売会ってデカくて派手で人が大勢集まってるもんだと 思っていたけど、 今日のは場所も商工会議所の一室だし、人も少なめ。 夏コミでは行列ができていた団吾たちのスペースも今日は空いている。 こんなんだったらいつでも遊びに来るんだけどな。 「これ新作?」 オレは御宅田の前でポーズをとっている、 天使のような白い衣装に黒いロン毛の少女戦士のフィギィアに顔を近づける。 「綺麗だなー」 上手い下手はよくわからないけど、可愛らしいのは確かだ。 御宅田はフィギィアつくりが得意らしくて、誉められるとデレデレと顔を崩して喜ぶ。 オレもちょいと嬉しくなって、サービス精神でちょいとスカートをめくってやる。 「ちゃんとぱんつ履いてらー」 「ちょ、やめるでござるよ」 わはは。 「こっちは?」 ひとつだけカバーがかかっているガラスケースを指差す。 「これはマルヒでござる」 「いいじゃん見せろよー」 「茶越くん、だめだよ」 団吾がこっそり耳打ちする。 「その中は肌色一色だから」 「ああ」 そういうわけね。一応、このサークルも男性向けでした。 「いやさ、フィギィアって普通に綺麗だし、好きなのはわかる。 わかるけど、そういうのはなんに使うの?飾れないよね?」 別に問い詰めているわけじゃないけど、御宅田は下を向く。 「やっぱおかず?」 冗談のつもりだったんだけど、さっと顔色が変わった。やべえ。 「いや、人様の欲望にケチをつけるつもりはないからなっ」 「あたりまえでござる。 どうせ○○○に×××を入れる機会なんて一生ないんだから 自家発電くらい好きにさせて欲しいでござる!」 いや、その年で諦めなくても・・・。 て、決定事項なの、それ? 「団吾、お前も」 同類?と、つい、友人の反応をうかがってしまう。 「そうだよ!」 「そうなの!?」 ちょっとおつきあい考えようかなって気になったぞ!わかっていたけど。 「お前、少女漫画みたいの描いてるじゃん。恋愛にあこがれあるんじゃないの?」 「実際は違うだろうし」 「夢のないやつめ・・・。 でもさ、最近はオタ同士でもコミケ帰りに意気投合して ホテル行くなんて話もあるって聞いたぞ」 そこのひとたちは、まあ、あれだけど、という言葉はさすがに飲み込む。 「お前ならそこそこ見れる顔してるし」 実はかなりイケメンの部類に入るんじゃないかって思ってるけど言わない。 「あと何年かたったらないともいえないんじゃないの?」 「認めない!性的に奔放なオタクなど!」 いや、オレだってそんなのイヤだけどさ。 そんなグーまで作って熱く否定しなくていいんだよ。 「マジで興味ないわけ?現実の女なんか大嫌い?」 「茶越くん、そこつっこむのルール違反」 「ふーん。興味はあるんだ?」 「だからダメだって」 「迫られたらどうする?」 「やだ。子供できちゃう」 「あ、ほら、オレがいるし」 オレなら子供できないし、おすすめなんだけどな? と、ちょっと視線をそらしながら冗談っぽく言ってみたら・・・。 「もっとヤだ」 コイツ、顔しかめやがった!酷すぎる! 「お前なんか一生ドーテイでいやがれ!」 「茶越殿、あらためて言われなくても我ら皆、端からそのつもりでござるよ」 茶越殿のお気持ちはありがたいでござるけどな、 なんて笑ってるけど、 お前らはどーでもいいんだ。 オレが誘ってる(んだよ、チクショー!)のはぶっちゃけコイツだけなんだって! 「団吾殿、男の娘というジャンルも悪くないですぞ」 なに盛り上がってんだよ!お前ら貪欲だな! ・・・まあ、そんな反応だから今、死にたくならずに済んでんだけどな。 オタクでいいこともあるんだな。くそっ。 |