ジェラシー 


「茶越殿、団吾殿ならコスプレフロアでござる」

言われて行ったら、ミニのセーラー服姿の団吾が男達に囲まれているのが見えた。
団吾のヤツ、盛んなフラッシュを浴びて、嬉しそうに媚び媚びのポーズをとっている。
差し入れの紙袋をぶら下げたまま、30分近く待ったが男たちが団吾を離す気配はない。
ついに忍耐が切れた。
「どいたどいた」と人ごみを掻き分け、
無理やりやつの手を引っ張って連れて行く。

「知らないオジサンと口聞いちゃいけません」
「オジサンじゃないよ。おにいさんだよ」

へらへら笑っているその顔がにくらしい。
そりゃ、いくらなんでも女にゃ見えねーし、おたくだし。
そんな物好きは世界でオレ一人だと思う。思ってるけど。

「茶越殿は甘いでござるよ。
横井さんも小野田さんも帰国してから結婚しているでござる」

オタ友さんはそう言ってたけど。て、例えが古くないか?若い子わからんぞ。

「物好きはいるのでござる」

うーん。そうかねえ。

「茶越くん、茶越くん何怒ってるの」
「別に。お前そんなに写真撮られたいの」
「せっかくだもん」
「そうかよ」
「あ、差し入れありがとーね」
「どういたしまして」

もう面倒なので機械的に口を動かしている。
うーんうーん。
女装した男が好きってやつもいるかも知れないしなあ。
世界は広いしな。

「茶越くんもさ、しない?」
「なにを」
「女装コスプレ。一緒に撮られよう」
「そーするか」
「ホント!?」

オレがついていたほうがいいかもしれない、
と思ったからなんとなくそう言っちまった。

「楽しみだなあ。茶越くんには絶対ピンクが似合うよ」

それが下手したら男の尊厳に関わる行為だと気づいたのはずっとあと。

「カメコを鈴なりにさせようね。一緒に。わぁ楽しみ!」

こいつのせいで、オレはだんだん深みにはまっていく。




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