ちょっと真面目にやってみました


硬派を気取るつもりもなかったけど、ボクシングに全てを注いできたせいか、自覚っていうんすか?そういうの、なかったみたいっす。
それが、兄貴に会って、兄貴のことを考えていると前がキツくなってきて・・・
なんとなく手でさすってるとヘンな気持ちになってきて・・・
『誰かに見られたら・・・』そう思ってももう手は止まらなくて・・・。

「兄貴にさすってもらってる想像してました・・・」 
「さするだけか?」
「最初のうちは。そのうち、もっと・・・」
「もっと?」
「言えません」
「言ってみろ。どんなことを想像してこの手でいじってた?」
オレの手を取り、指先を軽く口に入れた兄貴の、
挑発するようなまなざしを受け止められなくてオレは横を向く。
「そんな・・・あにき」
「言えぬか?」
「勘弁してくだせえ・・・」
「言えないなら、お仕置きじゃ」
兄貴は楽しそうにオレを押し倒した。
「こんなことか?こんなことか?お前のカワイイこれをこうしてほしかったんじゃろ?」 
「あ、あにき・・・そんな・・・兄貴のほうがずっとカワイイです・・・」
「言うと思った」
顔を見合わせて笑ってしまう。
兄貴の体に添わせて手を下ろしてゆき、ズボンの上からぎゅっと握る。
「ムカついたときも・・・兄貴のこれを思い出すと自然に顔がほろこんで・・・兄貴のこれはスゴいです」
「正直びみょうだけど、誉めてくれてるのは伝わる」
先っぽを指先でくりくり回しはじめると、やんわりと手で止められた。
「そう急ぐな。ゆっくりやろう」
「はいっす」
兄貴はあらためてオレを抱きしめた。

「しかし」

オレの前髪を掻き揚げ、至近距離でいろんな方向から顔を覗き込んでくすくす笑う。

「そうしているとかわいいな。裏番には全然見えんぞ」
「やめてください」
軽く振り払うと、兄貴の瞳が翳る。
「怒ったか?こんな格好させて」
「それは全然構わないっす」

タイトな黒のTシャツにこれもタイトなGパン。
それに(今は脱いでるけど)ちょっと派手めのGジャン。
髪はいつものように立てずに寝かして、ピアスは全部外す。

はっきり言葉にするのをためらう兄貴の意図を汲んで選んだのはオレ自身だ。

「野郎同士じゃ入れないんでしょ。こういうところは」

オレたちがいるのは、都内のホテルの一室。
しかも、いわゆるラブホテルってやつだ。

「ふむ。すまん」
「ビジネスホテルでいいんすよ。こんな高い部屋でなくたって」
「いや、せっかくだから」

真っ白な部屋は意外にもいやらしさはまったくない。
大きな窓に面したダブルベッドは天蓋つきで、やっぱり白いソファやテーブル、鏡台までついてる。それが妙に乙女チックで少々居心地が悪い。

「鏡台はともかく、箪笥は何に使うんすかね。ハンガーでもあれば十分だろうに」
「長期滞在するヤツもいるのかも知れんな」
「真っ白なのはなんでですか」
「非日常観の演出じゃろ。コンビニのジュースが思い切り日常なのがすまんな」
「こういうところのジュースはバカ高いんでしょ。当然ですよ。
だいたい、兄貴、なんでわざわざ・・・」
兄貴はオレの肩に顔を埋めて、はぁー、とため息をついた。
「兄貴?」
「いや、しあわせだと思って」
あらためてそんなことを言われると照れてしまう。
「正直、最初は戸惑った」
頬をなぞるあたたかい指。
「兄貴」
「が、今ではお前なしではいられない」
「兄貴」
「かわいいぞ、火讐」
兄貴の唇がオレの唇を覆った。
服を脱がせながら、兄貴の唇は首から鎖骨、胸へと移動し、最初は周辺をなぞるように濡らしてから、頂点を舐め、つつき、口にふくむ。
「ああ・・・」
声が、自然に漏れる。
「お前のそういう声そそる」
「言わないでください」
「もっと聞かせろ」
前面が終わると、ひっくり返して、首、背中、
オレの体の表面全部に兄貴のてのひらと唇が這う。

「兄貴、風呂入ってから・・・」

やんわりと止めても、とりあってもらえない。
「や・・・」
四つん這いで腰を高く突き出すように要求される。
「いい格好じゃ」
わしづかみにされ、息をふきかけられてびくっと反応してしまう。
「お前はいつも綺麗にしてるな」
そこに視線を感じて顔が火照る。
「兄貴のために・・・」
「オイのために?」
「兄貴のために・・・いつでもできるように」
「いい心がけじゃ」
なまあたたかいものか触れる。
「あにき!」
濡れた感触に、それが兄貴の舌だとわかり、飛び上がりそうになる。
「ゃあ、あ・・・」
信じられないようなあまったるい声が出てしまい、あわてて口をふさぐ。
「声押さえるな。ちゃんと聞かせろ」
くすぐったさが完全に快感に変わったとき、舌が侵入してきた。
深く入りこみ、入り口に唇が吸い付く。ディープキスみたいに中で蠢いて、時々引き抜いては入り口を舐める。
「ら、め・・・れす・・・そんなことは」
「全部かわいがってやりたいんじゃ」
「は、はぁ・・・らめ、らめ、恥ずかしくて、へんになる・・・」
とりとめのないことを叫びながら、自然に腰が揺れてくる。
「自分でいじって。そんなにいいか?」
指摘されて慌てて手を放そうとした。
「それでいいんじゃ。お前も気持ちよくなってくれ」
そう言ってふたたびそこを舐める。
兄貴にこんなところを舐められて、しかも兄貴の前なのに自分で握って扱いて。
「んっあっ、オレ、もうっ」
オレの訴えを聞いて、兄貴は舌を抜き差しし出した。
オレはとっさに前を握る手に力をこめる。
「あうう」
今までにない快感だった。
イッた後も体がビクビク痙攣して、なかなかおさまらない。
背中に感じる兄貴の重みが心地よい。
と、思ったら、抱き起こされて、腕の中に納められた。
よしよしと頭を撫でられるのがなんとなく悔しくて、すとんと滑り落ちる。
腿に手をつき、ズボンを下着ごと取りさってけなげに存在を主張している兄貴のものに口をつけた。
舌を伸ばし、流れ落ちる透明な滴を丁寧に舐め取る。
口の中に広がる兄貴の味をゆっくり楽しむ。
咥えると兄貴の内股が痙攣した。
口をすぼめてニ、三度、強く吸っただけで濃い精汁が放たれた。
なおも先端を舌で抉り、すべて搾り取ってから綺麗に舐めとる。
「なんすか」
顔を上げると、兄貴は感心したようにオレを見ていた。
「なんか、愛情がなければそんなふうには出来ないって感じ」
「愛情ありますから」
「わかってるけど。すごい」
オレは自分から仰向けになる。その上にシャツを脱ぎ捨てた兄貴がかぶさる。

「愛されてるんだな、オイは」
今さらなにを、と笑って体を開いた。

兄貴が腰を落とし、オレの中に入ってきた。
少しずつ腰を進める兄貴の背中に手を回す。
全部入ってしまうとしばらく動かずにじっとしている。
「好きだ」
耳に、頬にキスを落としながらささやかれる。
こういうときは特に女扱いされてる気がするけど嬉しいんだから仕方ない。
もどかしいくらい浅くゆっくりと動き始めた。
「兄貴、尻だからって遠慮しなくていいですよ」
「いや、むしろ尻だから興奮してる」
「そうすか。兄貴は尻が好きなんすか」
「いや、お前の尻だから」
「うれしいす、兄貴」
馬鹿なやりとりをしながら、動き、途中で止まって、しばらく髪を撫で、また動き出す。
ゆっくりゆっくり、と自分に言いきかせているような目的を持った動き。
それが気持ちよくて、いつのまにかオレは目を閉じていた。
「お前と」
薄目をあけると、苦しそうな兄貴の顔が間近にあった。
オレの目にぶつかると、切なげに目が細くなる。
「お前と一秒でも長くこうしていたい」
腹の奥から熱いものが湧きあがってくる。快感とは違う。幸福感とでも言うのだろうか。むずがゆい感覚。
兄貴が腰を回すように動かし始めると、それは全身に広がった。
「あにき、あにき、好きです」
「オイもじゃ。お前を、お前だけを」
そろそろかな、と思ったら、強く抱きしめられた。
同時に熱いもので満たされる。
「すごい・・・」
中で出されて、背筋がゾクゾクする。
物理的にイったわけじゃないのに、こんなに気持ちいいなんて。
兄貴も気持ちよかったらしい。オレを抱きしめたまま、余韻を楽しむように深く肩で息をしている。
「兄貴」
そっと耳元で囁くと、にっこり笑う兄貴の顔。
「やっぱりお前は最高じゃ」
それはオレの台詞ですって、何度言っても言い足りない。

「火讐、今日なんの日か知ってるか?」
「へ?なんかありましたっけ」
「覚えてないのか」
「すいやせん。なんです?」

いきなりホテルとか、どんなところに欲情したのか教えろとか言い出したのは・・・。

「お前とこうなって一ヶ月じゃないか」

照れくさそうに、でも真面目な顔でそんなこと。

「兄貴、本気っすか?」
マジ顔で聞くと、とたんに真っ赤になる。
「ああああたりまえじゃ。それくらい覚えとけ。女にもてんぞ」
「もてなくていいです。オレには兄貴だけですから。兄貴と違って」
「いやいやいや。そうじゃない。そうじゃないんだ」
「嘘ですよ。嘘。うれしいです」

かっこいいかと思うと、急にかわいくなって。
毎日違う顔を見せてくれる。
愛してるとか、いとおしいとか、そういう言葉で説明つかないくらい。

「兄貴大好きっす」

オレは絶対、誰よりも幸せだ。




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