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「大漁、大漁―」
部屋の電気をつけると同時に、両手に抱えていた紙袋をベッドに投げる。
阿弥はしかめ面のまま、その脇に腰を下ろす。
こいつは帰り道、ひとことも口を利かなかった。
「お前ね」
やっと口を開いたと思ったらずいぶんどすの効いた声だ。ま、オレは怖くないけど。
「シルバ先生、困ってたろ」
「んー」
阿弥に背を向け、オレは大きく伸びをする。


鬼。


「どういうつもりだ」
「さあ」
「あんなに胸押しつけて」
「へへっ」
オレのいい加減な返事にますます阿弥の声は低くなる。
「あんなに甘えた声出して。ハレンチ女」
「おや」
オレは振り向いた。
手を伸ばし、阿弥の膨らんだほっぺをつつく。
むに。
やわらかな肉がオレの指を押し返す。
この弾力、いい。
「やいてんのかな、阿弥たんは」
「触るな」
オレの手を払いのけると、寮の先輩に綺麗に結ってもらったツインテールを乱暴にほどく。
ああ、もったいない。せっかくかわいいのに。
「お前のいつもの口ぶりなら、男は見るのも触るのもイヤなのかと思うぜ」
「ばーか」
オレはせせら笑う。阿弥の感情の昂ぶりを十分承知の上で。
「四角四面でどうすんだ。女は生まれながらに役者でなくっちゃ」
言いながら胸を突き出して見せる。最近また、とみに豊かになってきた胸を。
「シルバは悪くないな。カワイイよ。もてあそんでやりたい部類の男ってヤツ」
「お前、サイテー」
阿弥は顔をしかめる。思ったとおりだ。
「フケツ」
「あらあら」
オレは笑った。
ゆっくり立ちあがり、阿弥を見つめたままボタンを外す。
「お前だって」
衣服を解いていく手の動きを阿弥の目が追っている。
「シルバに気があるくせに」
「なっ」
みるみる阿弥の顔が赤くなる。
あいかわらず素直なやつだ。
「あれは恋する乙女の目」
歌いながらチャイナ服を脚から引きぬく。

「お前ばかり見ている、オレの目はごまかせないよ。阿弥ちゃん」

「一年の時の話だろ」
わはは。素直に認めやがった。かわいいやつ。
「そうだったにゃー」
下着だけになり、ゆっくり近づく。阿弥は顔をそむける。
「ガキの頃の話だ」
「そうそう。今は大人だもんね」
細い肩をベッドの端に押し付ける。
「あの頃は純情なカワイイ阿弥ちゃん」
胸のホックを外す。ぷりんとしたふたつの膨らみがあらわれた。
「ココもすっかりやわらかくなったし」
桃色のキャミソールごと、まろやかな肉をつかむ。
「あいかわらずちっちゃいけど」
「黙れ」
「オレが奪ってやったんだもんね」
押し倒す。抵抗はない。
ブラウスは完全には剥ぎ取らず、手首で丸めたままにしておく。
その状態で腕を高く引き上げた。
「なにッ…」
両手首を押さえつけたまま、顔だけを腋の下に押し込む。
「あッ、ばかッ」
阿弥は脚をばたつかせる。
蹴飛ばしたりはしない。かわいい抵抗ってやつ。
オレは余裕だ。
鼻をつけて動物のように匂いを嗅ぐ。
「阿弥ちゃんのニオイがする」
吐息がせわしない。相当きているな
阿弥は潔癖だからな。絶対シャワー浴びてからじゃないとやらせないし。オレは別にいいんだけど。
阿弥ちゃんあんまりにおいしないし。
なんて考えながらちょっと舌を這わせてやる。
あ、やっぱりしょっぱい。
「今じゃ、こーんなハズカシイことまでさせてるもんなあ」
「喪助…ッ」
ひきつった声。
顔を上げると、阿弥の大きな目と目があった。
その目が濡れている。
目があって、ますますいたたまれないように身をひねる。
そして叫んだ。
「バカ…ッッ」

あ。
ズシンと腰にきた。
いい、この声。
やっぱ、お前はいい。

「阿弥ちゃん、けっこうよろこんでるし」
「よろこんでない…」
ずーっとオレをそそる。いじわるしてやりたくなる。
「よろこんでるね。うれしいんだろ。オレにいじめられて。オレにさわられて」
阿弥はいやいやするように首を振りつづける。
「さあ、ハズカシイとこ、見せてみろよ」
「バカ喪助っ」
泣いたってダメダメ。阿弥ちゃんの本心なんてお・み・と・お・し♪

いつまでもウブで。ピチピチで。
あー、阿弥ちゃんっていいなあ。
今日も満足。


「うーれーしーいーなー」
ぐったりしている阿弥の横で包みを開く。
「この本、欲しかったんだよなあ」
三国志絵巻集。三千二百円也。
オレにはちと高い。シルバも目を丸くしてたっけ。
思い出すと笑いがこみ上げてきた。
やっぱり、ちょっと悪かったかな。
シルバはオレもキライじゃないの。
ルックスいいし、性格いいし、スカしてないし。
センセカワイソなどと思いつつも顔が緩む。

「今日楽しかったよな」
返事はない。
「また行こうな。三人で」
「もう行かない」

イジメた上に当て馬にしちゃってゴメン。
ほんとはスキスキスキ(棒読み)。演技でもキライな男に擦り寄ったりしないよ。
だから許して、センセ。



おしまい。