月の光が差し込む静かな夜。
オレたちはいつものように莚を並べて寝た。
腕枕をしてもらう。
喪助が髪を撫でている。
いつのまにか、こいつの手の感触がすごく気持ち良くなっていると思う。
「阿弥陀丸」
耳に入ってくる声も快い。
喪助の声。
昼間は怒鳴ったりすることが多いけど、こんなときはいつもやさしい。
いつのまにかこうするのが自然なことになっている。
喪助に愛してもらうのが心地よくなっている。
喪助はオレの中で果ててぐったりしている。
オレは逆に元気になってやつの上になった。
喪助がしたように、首とか胸のあたりに口をつける。
あちこちに口付けしながら、からだを移動させていく。
喪助の腰のあたりに頭を突っ込む。
目の前に、いつもとかたちの違うものがあった。
さっきしたばっかりなのに。
またこんなになってる。
しょうがないなあ、こいつは。
猫をじゃらうにつついて撫でる。
そして顔を寄せた。
全部入るかなと思ったが、大きく口を開けてたっぷりと含む。
舌で舐め、吸いついた。
「なんだあ、お前」
髪をつかまれて顔を上げる。
ヤツはあきれたようだ。
「腹減ってんのか」
「ちょっとだけ」
「食えねえだろ、それ」
喪助の冗談をオレは無視する。
顔を伏せ、また舐め上げる。
ちゅうちゅうと音を立ててきつく吸った。
自分がしていることが信じられない。
最初の頃はさんざんこれに泣かされたのに。
なんども枕を重ねた今では。
なんか、こう、
かわいく、かな。
冷静に考えるとこんなもんのどこが、って思うけど。
やっぱり、食っちゃいたいって思ったんだよな。
いや、寝るのが好きなわけではないけれど。
「恥ずかしがるなって」
喪助が頭を撫でる。
オレはいまさらふてくされていた。
冷静に考えると、やっぱり情けない。
「いまさら恥ずかしがる仲じゃないし」
そんなことはわかってる。
「オレだから、そんな気になったんだろ」
「当たり前だ」
ほかの男など、想像するだけで気分が悪くなる。
「うれしいぜ、阿弥ちゃん」
頬に唇がふれる。
コイツはいつも調子がいい。
覗きこんできた顔は悪戯坊主のようだ。
「それに、みだらなお前もかわいい」
顔が熱くなった。
オレは目の前の助平面を殴った。
普通口に入れたいなんて思うもんじゃないし。
いくら好きな男のでも、普通はいやだ。
でも、そういうときってあるんだよなあ。
やつはみだらでもかわいいとか、むしろ、その顔がそそるとか。
ほかにもいろいろ恥ずかしいことを言った。
誉めてくれているんだろうけど、あんまりしつこいのでかえって恥ずかしくなる。
「もう言うな」
また手を振り上げて殴りかかる。
喪助は笑ってかわした。
オレを引き寄せながら、ヤツは言った。
「結婚するか」
コイツの頭はどうなっているのだろう。
「こんなにみだらになっちまったら、貰い手ないからな」
「嫁に行く気なんかないぞ」
「じゃあ、オレを貰ってくれ」
なるほど、コイツはなんでもできるから、オレよりずっと似合う。
オレはうなづいた。
「それなら悪くない」
「決まりだな」
ほんのすこし、オレなんかにはもったいないと思った。
でも、いい気になるから言ってやらないことにしよう。
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