オレのからだは冷たいだろうか。
オレと同じ年頃の娘はいつもちいさな子供を抱いて寝ていた。
ためしにオレも抱いてみたら、赤ん坊はむずがって泣いた。
しょげるオレに、喪助は笑って、
小さな声で女のからだはあたたかいから、と言った。
女はあたたかい。
オレはいまだに実感できないでいるけど、喪助はよく知ってるんだろうな。
どこで知ったのか考えるとやっぱりむかむかする。
喪助はわりと寒さが身にしみるたちだ。
ここではろくに着るものもないからつらいだろう。
今も、莚から出ている背中が寒そうだ。
もう外は雪が降ろうとしている。
オレが女だったら、喪助をあたためてやれるのだろうか。
「寒いんだろ」
声をかけると、喪助は顔を上げた。
「こっちこいよ」
「そうさせてもらう」
喪助は筵ごとオレに近づいた。
からだを密着させて二人で二枚の莚にもぐりこむ。
やっぱり、喪助の肌は冷たい。
抱き合っても、あんまり変わらないような気がする。
「あったかくならないな」
「そうだな」
喪助はなにか思いついたらしい。
いたずらっぽく笑う。
「あったまること、しようか」
予想はついていた。
オレはうなづいた。
冷えた唇を重ね合わせる。
絡みつく舌は熱い。
オレのも熱いのだろう。
たっぷり口付けしてから、喪助は首筋に顔を埋める。
「オレが…」
「ん、なんだ」
オレが女だったら、こんなことしなくてもお前をあたためてやれるのに。
「なんでもないよ…」
そのまま目を閉じて喪助に身を任せた。
喪助の指が入ってきた。
ゆっくり抜かれて、また入れられる。
くちゅ、くちゅ、とちいさな音がして、耳を覆いたくなる。
オレは身をひねった。
「ああ、いやだ」
この行為で快感を覚えるのはつらい。
喪助は頬にいたわるような口付けをした。
喪助は何度も言った。
いいじゃないか。気持ち良くなっても。
オレたちは好いて好かれた仲なんだから。
なにを遠慮することがある。
どう言ってもらっても胸が苦しい。
「我慢するな」
オレは首を振る。
「オレは、お前にうんと気持ち良くなってもらいたい」
わかってる。わかってるけど。
指の動きが激しくなってきた。
荒い呼吸をおさえられない。
喪助は乱暴にオレの中を掻き回す。
オレはすぐに耐えられなくなった。
「も、いいから」
無理やり絞り出した声は自分でもびっくりするほどかすれていた。
「早くしてくれ」
背後で喪助が笑ったのがわかる。
「なにを」
「ばか」
「言わなきゃわかんないぞ」
返事はしない。
こいつがちょっとだけ意地悪するのはいつものこと。
すぐに、オレの望みをかなえてくれる。
「じゃ、するからな」
こくりとうなづく。
お尻に固いものが当たる。
喪助は慎重に、腰を押しこんでいく。
「うう、」
背中に喪助の体重が乗っている。
押しつぶされそうだ。
痛みが押し寄せてくる。
目をつぶってそれを耐える。
はじめはゆるく浅かった動きが、次第に荒荒しくなってきた。
喪助はオレの腰を抱えて繰り返し繰り返し自分を叩きつけていく。
「うう…」
涙か出てくる。
乱暴すぎる、と思った。
でも、オレのからだは受け入れている。
喪助、ちゃんと加減してくれてるんだ。
お腹が苦しい。
圧迫感はどうしても慣れない。
早く終わってくれ。
でも、その一方で。
ずっと繋がっていたい、とも思う。
ああ、へんだ。へんになっちまった。
「お前の中、すごく熱い」
喪助の声が上ずっている。
うれしかった。
お前がオレに夢中になっている。
お前のも、すごく熱い。火傷しそうだ。
「そろそろいくぞ。中に、いいか」
「うん」
強い力で腰を引きつけられ、精を叩きつけられた。
熱い迸りが芯まで染みていくような気がする。
お腹の奥まで浸される。
オレは脱力した。
喪助が隣に横たわる。
あたたかさに包まれると、次第に眠くなってきた。
目を閉じる。
「そのまま寝たら風邪引く」
喪助は汗を拭ってくれた。
オレは赤ん坊のようにされるがままになっていた。
「よし。きれいになった」
拭き終わると、またぴったりと身を寄せる。
ぼんやり思った。
喪助はあったまったのかな。
もう冷めたんじゃないかな。
「大丈夫。ちゃんとあったまった」
髪を撫でる手がやさしい。
「今夜はゆっくり寝られる」
オレは安心して目を閉じる。
「お前はほんと、かわいいなあ」
次第に薄れていく意識の中で心地のよい声を聞いた。
「一番好きだぞ」
オレも、一番好きだ。
オレのからだ、冷たくてごめん。
でもお前はこうして抱いて寝てくれる。
ほかの誰でもない、オレを選んでくれる。
だから、オレも遠慮なくくっついていることにする。
どんなに寒い夜でも。
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