睦言2




いつも思う。
なんでこいつはこんなことをしたいのだろう。
だから、聞いてみる。
「オレの体なんか触って楽しいのか」
返事は予想済みだ。
「面白いぜ」
「こんなゴツゴツした体なんか」
「でかいほうが抱きしめがいがある」
後ろから抱きしめられる。
背中に柔らかいヒゲがあたる。
「胸もないし」
「こんな立派な胸板があるだろ」
おおきな手のひらが胸を覆った。
言いながら、笑ってしまいそうだった。
オレは馬鹿だ。
なんと言っても喪助はオレを誉めてくれる。わかっているくせに。
「お前と同じじゃないか」
まだ言っている。
「違うね。お前の体はオレにかわいがられるためにあるんだよ」
こころよい傲慢さはお前だから許せるもの。
下の方でなにやら悪い事をしている手も、おまえだから。
もっと触ってほしい。
オレは手を喪助の手に重ねた。
応えた指がやわらかく動き始める。
「こんなに大事にされている男はほかにいないぞ」
やさしい声が耳に流れ込んでくる。
その声もここちよい。
オレは目を閉じた。

指が動く。
腰の奥が熱くなる。
喪助はやさしく強く、オレを高みに追い上げてくれた。

最初は下の世話をしてもらっているようで、恥ずかしかった。
喪助は何でこんなことをするのだろう。
オレはもう、赤ん坊じゃないのに。
でもからだは気持ち良かった。
それで、オレもしてやろうか、と申し出たらもっと楽しいやり方がある、なんていって。
ひどいやつだ、お前は。
オレはあのことを決して忘れはしない。
ほかの男だったら間違いなく殺していた。
お前だから許す。でも。

責任はとってもらうぞ。

「阿弥陀丸」
呼ばれて目を開けると、息がかかるほど近くに見慣れた顔があった。
オレの大好きな顔。
そのまま引き寄せて、折り重なった。
からだを這う手の動きは執拗だ。

オレのからだなんて、本当につまらないと思う。
よくこんなもんを撫で回す気になるものだと思う。

でもな、喪助。
お前につまらないなんて思う権利はないんだぞ。
たとえつまらないと思っていたとしても、そう言わせない。
言ったら殺してやる。

「どうかなあ。お前は女が好きだからなあ」

でも、浮気したら殺す。
我慢する気はない。
お前はオレのものだって言ってくれたろ。

「お前のほうがいいって。
こんなにかわいいやつはいない。
かわいくて、かわいくて、食っちまいたいくらい」

歯の浮くようなことを真顔で言うお前。
お世辞なのはわかっている。
でも、これがお前の義務だから。
オレは何度も確認しよう。
聞いててうれしいし。

「もっと言え、喪助」


おしまい




















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