いつも思う。
なんでこいつはこんなことをしたいのだろう。
だから、聞いてみる。
「オレの体なんか触って楽しいのか」
返事は予想済みだ。
「面白いぜ」
「こんなゴツゴツした体なんか」
「でかいほうが抱きしめがいがある」
後ろから抱きしめられる。
背中に柔らかいヒゲがあたる。
「胸もないし」
「こんな立派な胸板があるだろ」
おおきな手のひらが胸を覆った。
言いながら、笑ってしまいそうだった。
オレは馬鹿だ。
なんと言っても喪助はオレを誉めてくれる。わかっているくせに。
「お前と同じじゃないか」
まだ言っている。
「違うね。お前の体はオレにかわいがられるためにあるんだよ」
こころよい傲慢さはお前だから許せるもの。
下の方でなにやら悪い事をしている手も、おまえだから。
もっと触ってほしい。
オレは手を喪助の手に重ねた。
応えた指がやわらかく動き始める。
「こんなに大事にされている男はほかにいないぞ」
やさしい声が耳に流れ込んでくる。
その声もここちよい。
オレは目を閉じた。
指が動く。
腰の奥が熱くなる。
喪助はやさしく強く、オレを高みに追い上げてくれた。
最初は下の世話をしてもらっているようで、恥ずかしかった。
喪助は何でこんなことをするのだろう。
オレはもう、赤ん坊じゃないのに。
でもからだは気持ち良かった。
それで、オレもしてやろうか、と申し出たらもっと楽しいやり方がある、なんていって。
ひどいやつだ、お前は。
オレはあのことを決して忘れはしない。
ほかの男だったら間違いなく殺していた。
お前だから許す。でも。
責任はとってもらうぞ。
「阿弥陀丸」
呼ばれて目を開けると、息がかかるほど近くに見慣れた顔があった。
オレの大好きな顔。
そのまま引き寄せて、折り重なった。
からだを這う手の動きは執拗だ。
オレのからだなんて、本当につまらないと思う。
よくこんなもんを撫で回す気になるものだと思う。
でもな、喪助。
お前につまらないなんて思う権利はないんだぞ。
たとえつまらないと思っていたとしても、そう言わせない。
言ったら殺してやる。
「どうかなあ。お前は女が好きだからなあ」
でも、浮気したら殺す。
我慢する気はない。
お前はオレのものだって言ってくれたろ。
「お前のほうがいいって。
こんなにかわいいやつはいない。
かわいくて、かわいくて、食っちまいたいくらい」
歯の浮くようなことを真顔で言うお前。
お世辞なのはわかっている。
でも、これがお前の義務だから。
オレは何度も確認しよう。
聞いててうれしいし。
「もっと言え、喪助」
|