月夜
今夜は満月だ。
草原は昼間のように明るい。
月の光の中でふたりは肩を並べて歩いていた。
大木の下にふたりは腰を下ろした。
そこだけは生い茂る葉が月の光をさえぎっている。
手のひらに触れる草の寝床はやわらかく心地よい。
すぐに、喪助の手が肩にかかる。
頬に唇を寄せてくる。
阿弥陀丸は申し訳程度に顔をそむけた。
「よせ」
その気がなかったらこんなところについて来ない。
言ってみただけだ。
「阿弥」
喪助が優しく囁く。
それだけで耳を愛撫されているような気がしてくる。
はやく触れて欲しい。
うんと愛し合いたい。
だれかいる。
熱くなった頭の隅で警報が鳴っている。
視線を感じる。
殺意はないようだ。
だれか覗いているのか。
村のこどもだろうか。
自分もこどものときはよくやった。
見つからないかとはらはらしながらおとなの行為を覗いた。
でも、行為を止める気はなかった。
逆にきつく喪助に抱きついて先を促す。
喪助はそれに応じた。
どう思われているだろう。
夜でも男同士だということくらいわかるはずだ。
喪助は気づいてないのだろうか。
快感にふるえながら考える。
気づいているのかもしれない。
知っていて、知らん顔をしているのだろうか。
耳元に口をつけて囁く。
「喪助」
喪助がにやりとしたのがわかった。
「見たいやつには見せてやれ」
「もう、お前は」
顔がほころんでしまう。
ああ、どう思われていてもいい。
けがらわしいと言いたいやつには言わせてやる。
「見られたほうが興奮するだろ」
「ばか」
やっぱり、彼らだって気づいていたんだ。
彼らの間にも自分たちのような会話があったのだろうか。
そう思うとおかしくなった。
いつのまにか
見ていたこどもから、見られる大人になっている。
お前と一緒だ。
恥ずかしくなんかない。
大人になるのは楽しい。
そんなことを考えながら、月明かりの中で喪助とたっぷり愛し合った。
やっぱり、いつもよりすこしだけ興奮した気がした。
おしまい
今まで西岸寺の子供たちの存在を無視していましたが、よく考えると青●ばかりしてたのかもしれません、この二人。