お前はオレを拒んだことなんかない。

「大丈夫か」
「うん」
望んでいるのはオレなのに、お前はいつもそう尋ねてくれる。
いつもやさしく触れてくる。

ときどき、そのやさしさがもどかしくなる。
泣きたくなってくる。

帯が解かれ、着物の合わせ目に手が入ってくる。
確かめるように触れる。
もどかしい。

喪助が尋ねる。
「なんで泣いてるんだ」
オレは応える。
「お前がやさしいから」
「へんなやつだな」
喪助は笑う。

首、肩、背中、腕の内側、脚。
やさしく触れて、口付ける。
気持ちいい。

「オレなんかにやさしくすることなんかない」
「なんで」
お前はオレをなんだと思ってんだ。
「オレは人斬りだ」

喪助はなんともいえない顔をした。
怒ったような、それでいて泣きたいような。

「お前が人を斬るのは、オレたちのためじゃないか」
「することは同じだ」
「お前は違う。オレが知っている」

きっと。
オレがどんなに変わっても、お前はそう言ってくれるのだろう。

やさしい手が心地よかった。
オレはもう口を聞かず、喪助に身を任せた。