お医者さんごっこ

1
毎日暑い。
クーラーがついていてもここではそんなに効かせるわけにはいかない。
喪助は机の上でへばっていた。

「先生」

昼休み、阿弥がかわいい顔を出した。
喪助はもちろん歓迎する。

阿弥はふくれっつらだった。
開口一番、こう言った。
「先生、オレで何人目なの」

「なに、急に」
「麻倉先生が言った」
英語の麻倉茎子だ。
「先生は、かわいい女の子が好きだから気をつけろって」
「え」
喪助は顔をしかめた。

「本当に、ほかのやつにもしてるわけ」
「してない。してない」


阿弥は保健室に来るときは何時も教材を持ってくる。
それなのに。

(麻倉のやつめ)

油断がならない。

麻倉茎子は見た目と裏腹に厳しい目を持っている。
高校時代は喪助もよく怒鳴られていた。

(教科書は持って帰りなさい)
(べつにいいじゃん。使わないんだから)
(あなたの態度は非情に悪い)

思い出すとむかむかしてくる。

阿弥は疑わしそうに喪助を見ている。
「本当に」
「馬鹿言うんじゃないの」

とにかく、対策は後で考えよう。
せっかく来てくれた阿弥を逃す手は無い。

「今日暑いよね」
話題を変える。
「涼しくしたげる。こっちおいで」

喪助は阿弥の手を引いてベッドに誘う。
そしてしっかりとカーテンを閉めた。



2
阿弥はおとなしくベッドに腰掛けている。

喪助は冷凍庫を開け、円錐状の氷を取り出す。
下半分にタオルを巻いた。
「これ、阿弥にご馳走してあげるね」
そう言って、ミニスカートから剥き出しになっている阿弥の太股に近づけた。

「きゃっ」
阿弥が飛び上がる。
「なにすんの」
「まあまあ」

喪助はににやする。
「暑いときには冷たいものが一番」
保健医の台詞じゃないなと思い、さらにおかしくなった。

綺麗なうなじに当てる。
肌に触れた途端、尖った角が溶けていく。

「そんなに冷たくないでしょ」
阿弥がうなづく。

「阿弥ちゃん、前開けて」
阿弥はおずおずとボタンをはずした。
ブラウスの合わせ目から白い布地が覗く。
「かわいい。スポーツブラだね」
喪助は布をまくった。
「これも、取っちゃおう」
「あ…」
かたちのよいふたつの膨らみと、ピンク色の乳首があらわれた。
喪助はそこに氷を当てる。

火照った肌に、ぴんと神経が研ぎ澄まされるような緊張感が走っている。
爪を立てて愛撫するように刺激が、自然にからだを敏感にしていく。

「あ」
阿弥はぴくんと震えた。

溶けた水が肌を伝っている。
それがくすぐったいのだろう。

「良くなってきたね」
喪助は確認する。
阿弥はかすかにうなづいた。

「じゃ、下も脱ごうか」
阿弥は首を振る。
「こっちはもっと気持ち良いよ」
有無を言わせずパンティを下ろす。
「駄目駄目」
きゅっと閉じようとする膝を押し開く。
「阿弥ちゃんのかわいいとこ、ちゃんと見せて」
白い太股をおさえこむ。
両足を大きく開いた淫らな格好にしてしまう。
容赦無く中心部に手を伸ばす。

阿弥は身を震わせた。
「冷たいよ」
「最初だけだから」

先端で阿弥の花園を丁寧になぞる。
阿弥は顔を真っ赤にして、そっぽを向いている。

「そんなに見るな」
「すごく綺麗なピンク色」
「やだやだ」
「たっぷり濡れて光ってる。やらしいなあ」

言葉で辱めながら、喪助はちいさな頂きの周辺に円を描く。
「く…」
ぴん、とつま先が反った。
「中にもあげるね」
回転させながら、ゆっくりと挿入する。
奥まで入ると、またゆっくりと抜く。
その繰り返し。

阿弥が腰をもぞもぞさせだした。
さっそく尋ねてみる。
「どんな感じ」
「すごく、変」
息が上がっている。
「冷たいのに、熱くて…」
「霜焼けみたいに痒いでしょ」
「うん」
霜焼け同様に、内部が充血して膨張しているはずだ。
痒さが快感になるまで時間はかからない。

頃合いを見て一番弱いところに当て、強く擦った。
「うう…」
背中が激しく反った。
火のようになった体内で冷たい塊がすべて溶けていくのを感じた。



3
喪助は手を引いた。
氷は見事になくなっていた。
内部からはまだ水がとろとろ出てきてている。
それを確認してから、阿弥に話しかける。

「ね、涼しくなったでしょ」
阿弥はほっと息をついた。
けだるげに喪助の手を取り、頬に押し当てる。
「先生の手、冷たい」

そういえば、右手は紫色にかじかみ痺れている。

喪助はちょっと迷い、
「じゃあ、ここで」
白い太股の間に突っ込んだ。

阿弥は小鳥のような声で笑った。
スカートを下ろし、両股で喪助の手を挟み込んだ。

「さすが、強いな」
ほっそりしていても筋肉はある。
弾力のある肉が心地良い。
すぐに体温が回復してきた。

喪助はスカートの中で指を伸ばす。
「これ、何かな」
ちょんちょん、と指先に当たる綿毛をつつく。

「や、もう」
締め付けている太股にさらに力が入る。
「イタズラすんな」
阿弥が笑う。
喪助も笑った。

「先生、ほかのやつも涼しくしてやったの」
まだ言ってる。
喪助は苦笑した。
「してないよ」

茎子には注意しなくては。
阿弥の代わりは誰もいない。


(勉強しなくても良い点が取れるからいい気になっているのですね)

(あなたはなんにでもいい加減です。そんなことでは)

(誰もあなたを本気で好きになってくれませんよ)


馬鹿なことを言うと思った。

喪助はもてた。
いつも女の子を侍らせていた。
でも、ちっとも大切にしてあげなかった。
人形みたいに愛でていただけだ。

こんなことをしたいと思ったことはない。

はじめて、執着というものを感じる。

「阿弥だけだよ」
もう一度言って、左手で髪を撫でてやった。

「先生、ゲイじゃないからね」
「説得力ないよ」
「やっぱ、そうかな」
「そうだよ」

本気で好きになったら。
こいつもオレを本気で好きになってくれるかな。


おしまい