おばかさん ところはシャーマン学園の情報処理室。 生徒たちがパソコンの画面に見入っている。 「ほー」 少女達はみな、同じHPにアクセスしていた。 「はあ」 まずはピリカがため息をついた。 「ほお」 喪助も声を漏らす。 「ふん」 蓮は鼻先で笑う。 「かなり、きてるよね」 「うん」 「エロいな」 それ、いわゆる十八禁サイトだった。 主人公(男の設定だが、からだのつくりも反応もどう転んでも女にしか見えなかった)が 戦闘仲間のひとりに強姦され、はじめは拒んだものの徐々に性感に目覚めていく…といった内容である。 その過程が、主人公の視点やら相手の男の視点やら入り乱れて臨場感たっぷりに描写されている。 激しいプレイの数々が乙女達の頭を占めている。 「この羞恥プレイ、経験者でなきゃ書けないよな」 「うん。主人公の恥じらい方が何とも」 「恥じらうのは受け入れてる証拠だな」 「やっぱり、阿弥もこういうのがいいのかな」 なんだって。 ピリカと蓮の目が喪助に向けられる。 喪助は真顔で続ける。 「だからさ、今のままで十分満足させてやってる自信はあるし、 オレのフィンガーテクはなかなかのもんだと思うわけだけど、やっぱ、指は細いだろ。 奥まで届かないし。 それに女だからどうしても体力的に弱いし。後ろから前から激しくってわけにはいかないんだよなあ」 教室が静まり返る。 誰一人言葉を発するものはいない。 「それで」 蓮が口火を切った。 「ヤツがそのほうが良いと言ったら、お前はどうするつもりだ」 「あー、そりゃあ善処するさ。小道具に頼ることもできる。 どうしてもって時は…うわあ」 喪助はとっさに屈み、頭上に振り下ろされる椅子をかわした。 ピリカと蓮はとっくに席を立っている。 「危ないじゃないか」 「この、おおばかやろうっっ」 真っ赤な顔で仁王立ちしているのはもちろん阿弥である。 「お前なんか死んじまえ」 天井が抜けるような声で叫ぶと、教室を飛び出す。 「あ、阿弥」 もちろん喪助も後を追う。 二人の後姿を見送り、ピリカはぼそりと呟く。 「喪助のやつ、やっぱ、自分に当てはめながら読んでたわけかな」 「当然だろう」 ピリカはまた、「はあ」とため息をついた。 「なんだよーー。そんな怒るなよ」 「これが怒らずにいられるかっっ」 ぷりぷりしながら大またで歩く。 「今更みんな知ってるって」 「違う。あの言い方じゃオレが淫乱みたいだろうが」 「聞いてたのか」 喪助は全然悪びれない。 「じゃあさ、ほんとのとこ、どうなんだ。 「なにが」 「お前、硬くて太いモノでぐちゅぐちゅに突いて突いて突きまくってほしいか」 阿弥が振り向く。 「いや、指や舌で入り口付近を掻き回すより奥まで突いて欲しいってさ。書いてあってさ。 そういうもんかね」 阿弥の顔は人形さながらに白い。 「いとしいお前のためなら頑張る。マジで」 わずかに、阿弥の唇が動いた。 「今のままがいい」 蚊の泣くような声で呟くと、くるりと背を向けた。 「え」 喪助は聞こえなかったふりをする。 「お前の指がいいって言ってんだ。何度も言わせるな」 再び駆け出す阿弥。喪助は笑いながらその後を追う。 「あー、やっぱりー。そうじゃないかと思ったの」 「うるさい。黙れ」 ばたばたと廊下を走る二人。 「だめだ」 教室では、ピリカが机に突っ伏していた。 「もうなまなましくて読めない」 その声は悲鳴に近い。 「犬も食わないようなのは、二人でやって欲しいよねえ」 「まったくだな」 周囲のものにはとんだ災難である。 喪助のはしゃぐ声がするほうに目をやり、ピリカはまた、大きなため息をついた。 おしまい |