花園番外編その2 「たまにはこんな二人でも」

「へんなやつだな。こんなとこに呼び出して」
目の前の阿弥は見たこともないほど神妙な顔をしている。
 
今朝、喪助は昼休みに体育倉庫まで来いと言い渡された。
「こんなとこで昼飯か」
阿弥は応えない。唇を結んだまま、喪助を睨みつけている。
 
いやな雰囲気である。
まさか果たし状ではあるまいに。
 
「おい」
ふいに阿弥の手が動き、喪助の手首を握った。
強い力で引かれ、無理やりマットに座らされる。
「なんだよ」
「お前」
初めて、阿弥が口を開いた。
「オレに飽きたか」
 
喪助はぽかんとする。
 
「なに言ってんだ」
紅い目が正面から見下ろしている。
「正直に言え。オレが嫌になったか。ほかにいいやつができたか」
「おい、阿弥」
つかまれた手首がきりきりと痛む。
この力は本気だ。もとより、冗談など言うやつではない。
 
「理由を言ってみ」
とにかくなだめようとするが、阿弥はひどく興奮しているようだ。
 
「喪助」
突き倒される。
下はマットなので痛くはないが、とつぜんの展開と阿弥の迫力に押されてしまう。
 
「オレは、こんなにお前が好きなのに」
「オレもだ」
「うそだ」
 
どうしたのだろうか。
喪助は頭を絞って考える。
なにか悪いことをしただろうか。
とくに思い当たらない。
 
その間に、阿弥は引き千切るようにブラウスのボタンをはずしていた。
「なにやってんだ」
ブラウスが引き折ろされ、手首で丸まった。
つぎはスカートをめくろうとしている。
「よせ」
叫びかけた口を阿弥の唇が塞ぐ。
 
舌が侵入してくる。
ちろちろと上あごを擦る。
「ん…」
喪助はぴくりと震えた。
 
阿弥はキスが好きだ。
好きなだけあって、なかなか上手い。
 
すぐに腰がむずむずしてきた。
 
「喪助…」
口を離すと、阿弥が切なそうに名前を呼ぶ。
スカートをまくられる。今度は拒まなかった。
 
喪助の腰に、阿弥が馬乗りになる。
「オレ、こんなにもう…」
 
さすがに驚いた。
阿弥は自らスカートをまくり、やわらかい部分を押しつけてきたのだ。
 
「ちょっと、待て」
尋常じゃない。
 
阿弥は喪助の言うことなど聞かず、強く押しつけてくる。
熱い吐息と共に訴えるような声。
「お前のせいなんだから」
布を隔てて阿弥の肉の火照りを感じる。
 
どうしよう。
こんなに情熱的に迫られるなんて。
 
「あ…」
阿弥はいいところを見つけたようだ。
そこに当てたまま、腰を動かし出した。
 
ぐりぐりと固い感触は恥骨だろうか。
喪助の腰にも、次第にあたたかいものが広がってくる。
 
「ん…」
何度か擦りつけたあと、阿弥のからだが軽く震えた。
 
「はあ」
息を吐き、喪助の胸に頭を乗せた。
喪助はその髪を撫でてやる。
 
「気は済んだか」
「うん」
阿弥は素直にうなづいた。
「喪助、最近触ってくれなかった」
「そうかな」
「そうだよ」
口を尖らせる顔が可愛い。
言われてみれば、ここ一月ほど、愛のイベントにふさわしい時間にはなにかと邪魔が入っていた。
喪助自身もほかに考えることがあったから。
阿弥を不安にさせてしまっていたのか。
 
「ごめんな」
頭をもうひと撫でしてやる。
 
「埋め合わせはしてやる」
口元をゆがめる。阿弥の顔がうれしさを隠しきれないようにほころぶ。
期待の視線を感じながら、喪助は厳かに命じた。
「下着取って、自分で足を開いてみな」
 

阿弥はおずおずと下着を脱いだ。
履いていた下着を丸めてマットの裏に隠している。
喪助に見られたくないのだ。
可愛いやつ。
 
「脱いだぞ」
「ここに来な」
阿弥は従う。
「スカートあげて」
両手で端を摘む。
すこしづつ、裾が上がっていく。
喪助はじっくり見物している。
 
太ももまで上がると、阿弥は手を下ろした。
「やだ。恥ずかしい」
「言うこと聞かないといじってやらないぞ」
阿弥はちらりと喪助の顔を見る。
そして、もう一度まくった。
白い下半身が丸見えになった。
 
まだ昼間である。
倉庫の中は十分に明るい。
 
「ちゃんと開きな」
「もう…」
顔をそむけながら、細い腿を大きく開く。
 
喪助はじっくり見つめてやる。
 
阿弥はここも上品で可愛いと思う。
端正な切れこみの周辺が熱を帯びている。
 
指を近づけて軽く撫でる。
それだけで透明な液が指を伝った。
 
「この汁はなんだよ」
「やだ」
「相当好きものだな。いやらしいぞ」
 
棘を摘む。
「あ」
阿弥がちいさな声をあげた。
 
喪助はすぐに離す。
そしてまた摘む。
そのたびに阿弥はぴくぴくと鋭い反応を示す。
 
指先でくすぐると、食いしばった歯の間から低いうめき声が漏れた。
「くうう…」
太ももが小刻みに震える。
膝が刷り合わされる。
阿弥は三十秒ほど全身を痙攣させていた。
 
喪助はにやにやする。
「よっぽど欲しかったんだな」
 
焦らしてやろうと思っていたのに。
すこし残念だ。
次の機会に回すとするか。
 
阿弥が顔を上げた。
露骨にすっきりとした顔だ。
 
「喪助」
「ん」
「また、してくれるよな」
間髪を入れず、喪助は応える。
「当たり前だ」
 
多分な。
これから何回できるかはわからないが。
これで終わりにするつもりはない。
 
おしまい