夏の午後
日差しも、影の濃さも、空気も夏らしい。
立っているだけでじんわり汗ばんでくる。
それでも風は心地よい。
たまおは潮の匂いのする風を胸一杯に吸い込む。
砂丘の上に立ち、浜を見下ろす。
真っ赤なビキニを着た少女が一人、ビーチパラソルの下に仰向けなっていた。
長身に見事なプロポーション。
しばし、その姿に見蕩れる。
豊かな胸。
細い腰。
きゅっと締まったお腹。
東京の海なら誰もが振り向くだろう。
(こんな綺麗な人と…)
思い出すと顔が熱くなって仕方がない。
胸もきゅうと締め付けられるようになる。
だめだだめだ。
たまおは頭を振って、へんな妄想をかき消した。
声をかける。
「お待たせしました」
振り向いた阿弥の顔は不満そうだ。
「遅いぞ」
阿弥は待ちくたびれて寝てしまっていたのだろう。
「お弁当作ってたんです」
そう言うと、たちまち阿弥は相好を崩した。
「うまいんだろうな」
「どうでしょう。あんまり期待しないでくださいね」
たまおは幸せだった。
生まれてから今が一番幸せだと思った。
頼る親もいないたまおのたったひとつの希望の灯。
それが目の前の美しいひとだった。
たまおはたったひとりの肉親の祖母の心遣いで学校に通わせてもらっている身の上。
当然生活はわびしいものだった。
さらには、生来の内気さゆえ友達も出来ない。
味気ない毎日。
そんなある日。
朝早く、たまおは体育館の入り口の水飲場にて美しい影を見出した。
練習の後だろう。
髪も顔もびっしょり濡れている。
彼女の、普段以上につややかな横顔に見蕩れた。
その日から、たまおはひどく早い時間に登校するようになった。
学校行けばあの方に会える。
それだけで、孤独な日々も耐えられた。
その灯の麗人と、昨夜たまおは結ばれた。
海が見える祖母の家で。
海はどこまでも絵の具のようなまっさらな水色だ。
「こういうのを水平線が見えないって言うんだな」
遠浅の海。さらさらの砂。
熱い砂の感触が心地よい。
「あそこ」
長い指が差ししめす。
それほど遠くない沖にちいさな島がある。
「あそこまでなら行けそうだな」
阿弥は泳ぎが達者なのだ。
「たまお、行った事あるの」
「いいえ」
たまおは海が怖かった。
おばあちゃんに手を引いてもらっても、どうしても深いところには行けなかった。
「たまおは泳がないの」
「はい」
阿弥はまた頬を膨らませる。
「せっかく来たのに」
「いいんです。私は見てるだけで」
阿弥はちょっと考えて、笑った。
「じゃあ、せめて焼かないと」
たまおは白すぎるから、言いながらバックから小ビンを取り出す。
「オイル塗ってやるから、早く脱げ」
阿弥は悪戯っぽく笑う。
「誰もいないんだから、いいだろ」
たまおはおずおずとシャツを脱いだ。
白い、ワンピースの水着一枚になる。
阿弥の視線が恥ずかしかった。
手足は棒のようだし、胸なんて水平に近い。
阿弥に比べたらなんとも貧弱なからだ。
「ほら、寝る」
「ひゃ」
背中にひんやりとした感触。
そして阿弥の手のひらの感触。
「これでよし」
背中をまんべんなく撫でてから、阿弥は命令した。
「仰向けになって」
たまおは素直に従う。
オイルを胸にたらし、阿弥は楽しそうにてのひらで伸ばしていく。
すぐに、たまおの水着はオイルでべとべとになってしまった。
「すごくやらしい」
阿弥がくすりと笑う。
見てみると、水着の上に乳首がぽっちり浮き上がっている。
「あ」
腕で隠す。
「ダメダメ」
阿弥は笑っている。
「まだまだ」
お腹をさする。
そして、おへその下にもひとたらし。
「やだ」
そこはもう熱くなっている。
中心の線に沿って指が動く。
くにくにといやらしく動く。
「やめてください…」
じわじわと快感が広がる。
親指と人差し指で布を寄せている。
一番敏感なところをきゅっと、きつく摘まれる。
腰が跳ねあがった。
「あ」
でも、すぐに離れる。
内ももやわき腹をさする。
「たまおのかわいいとこ、良く見えるぞ」
意地の悪い囁き。
「やだあ」
たまおは足を開いたまま、荒く息をしていた。
からだの奥からじんわり飢えてくる。
強い刺激を欲している。
「たまお、して欲しいか」
うなづいた。
恥ずかしさよりも下半身の飢えのほうが切実だった。
「なにを」
阿弥は徹底的に焦らすつもりだ。
涙がにじんでくる。
「強く擦って欲しいです…」
「どこを」
「さ、さっきのところを」
「よし。合格」
布の隙間から指が這い込んできた。
「すごく堅くなってる」
指先でこりこりと擦る。
たまおはすぐに達した。
息を整えながら、阿弥の手をつかむ。
阿弥はやさしく応える。
「なに」
「私もしたいです」
ようやく口にすることができた。
昨夜は堅くなってできなかった。
たまおだって、阿弥を愛したい。
愛されるだけじゃ物足りない。
「いいよ」
阿弥はうなづいた。
たまおは阿弥の下になったまま、パンティに手をかける。
ためらいながら引き下ろした。
白い肌に浮かぶ、鮮やかな銀色に目が奪われる。
鼓動が早くなる。
してもらうときよりもずっと思い切りが必要だ。
脚の間に顔を突っ込む。
どきくどきする。
していいのだろうか。拒まないからいいんだと思うけど。
指で開いてみる。
阿弥のそこは透明な液で濡れていた。
さらに大きく開き、入り口を露出させる。
穢れのまったくないピンク色。
ここも綺麗だ。
たまおは舌を尖らせてそこに差し込んだ。
好ましい潮の味がした。
「ううん…」
阿弥の腰が揺れる。
恥ずかしそうな声だ。
なんとなくうれしくなって、狭い筒を大胆に掻き回した。
時々舌を抜き、上部で自己主張をはじめた芯に吸いつく。
「んっ」
阿弥の手がたまおの頭を押さえた。
「あ、あ、」
腰の動きが激しくなる。
自分の愛撫で阿弥が乱れているのがうれしい。
「うんと、気持ち良くなってください…」
内部を舌で掻きまわしながら、濡れた指で芯をいじった。
「ひ、あ…」
太股が強張り、やがて痙攣した。
マットの上に二人でねそべる。
阿弥はくすくす笑っている。
「悪いやつだ」
たまおの頭を小突く。
たまおはちょっと誇らしかった。
「そうですか」
水は冷たかった。
(ヌルヌルで気持ち悪いだろ)
いやがるたまおを阿弥は強引に海に引っ張り込んだ。
泳げないたまおの手を、阿弥は引いてくれた。
足が立つぎりぎりまで進んでいく。
阿弥はずいぶん近くなったかの島を指差した。
「明日はあそこまで行こうな」
「無理です」
首を振るたまおに、阿弥は笑顔を見せた。
「オレが連れて行くから」
綺麗な顔だった。
「はい」
このひとがいてくれる。
やっぱり、自分は最高に幸せだ。
おしまい
|