3
授業が終わると、喪助は学級委員のくせにホームルームをサボった。
阿弥を求めて学校中を探索する。
思いつく限りの場所を覗いても阿弥はいない。

「こんなとこにいたか」
閉め切った体育倉庫でようやく見つけた。
体操服姿の阿弥は跳び箱の上でぽつんと膝を抱えている。
「阿弥ちゃぁん。どうちましたか」
赤ちゃん言葉で擦り寄っていく。

照れ隠しである。喪助だって悪いと思っている。

「寄るな」
やっぱり、邪険に払いのけられた。
「そんなに怒ってるの」
柄にもなく遠慮勝ちに尋ねた。

「お前こそ、オレを馬鹿にしてるんだろ」
阿弥はようやく喪助を見た。
その顔はふてくされているというより、なんだか悲しそうだ。

喪助は首をひねる。
「なんでまた」
「十六にもなって失禁してしまったなんて」
「なにそれ」
「とぼけるな」
「ああ」
思い当たって、喪助はふき出した。
「笑うな」
阿弥は真っ赤になって抗議した。
大きな目には涙が光っている。

こいつ、あのあと、自分で確認してみたんだ。
股のところがへんな感じだったから。
そうか、そうか。

阿弥が下着の中に手を入れている様子を想像すると笑いが止まらない。
そして、再びむらむらと悪戯心が起こる。

「いや、悪い。でも、阿弥ちゃん」
口元が自然につりあがっていくのを感じる。
悪魔のような顔になっているかもしれない。
だって、阿弥はウサギのようにおびえているのだ。
「馬鹿だねえ。オモラシじゃないの」
阿弥はけげんな顔をする。
喪助はわりとしっかりした感触の肩をつかんだ。
耳元で囁く。
「女のからだには、当然起こる現象なの。本当に知らないのかな」

ああ、とめられない。
なんて可愛いのだろう。
本当に飽きない。いつも、期待以上の反応をしてくれる。
やっぱり、完全にオレのもんにしておかないとな。

この時間、どのクラブも倉庫は使用しないはずである。
喪助は周囲を見まわした。
薄暗い。
埃っぽいが、それもまた背徳的でいいかもしれない。
なにより、床にはマットまである。
そして。

喪助はひそかに、さっきから阿弥が座っている位置が気になっていた。

「阿弥、うつぶせになってみ」
阿弥はいぶかしがりながらも、
言われたとおりに布でカバーされた上部に腹ばいになる。
「なんだよ」
「おもしろいからさ」
安定感を失うまでお尻をずらさせる。
自然に跳び箱にしがみつくかたちになる。
喪助はブルマーのところが角にあたっているのを確認する。
そして両手で腰を支えて圧しつけた。
「なにすんだよ」
「いいから、そのまま」
二、三度擦らせる。

「あ、」
顔は見えないが、しがみつく腕に力が入ったのを感じた。

さらに圧しつけると、阿弥の腰が動く。
自分から腰を突き出している。
喪助は満足した。
「なんとなく気持ちいいだろ」
阿弥はこたえない。当たり前である。
このままもっと楽しもうかと思ったが、
最初からあんまりマニアックなことはやめようと考え直した。

「阿弥ちゃん」
腕を取ってこちらを向かせる。
差し込むわずかな明かりで頬が紅潮しているのが見えた。
ひとみがきらりと光る。
涙だ。
それはたままち喪助を興奮させた。

阿弥は跳び箱の上でがっくり膝を折っている。
喪助は無遠慮にブルマーの中に手を差しこんだ。
下着を掻き分ける。
指が、阿弥の秘密の花園にはじめて触れた。

てのひら全体で軽く撫で、子猫の肌のような感触を楽しむ。
撫でながら、真中の三本の指で配置を確認する。
自分のとそう変わらないようだ。
「ほら、自分で触ってみ」
いやがる手に手を添えて、下肢に導く。
そして、すでにじんわり湿っている個所に触れさせた。

人差し指をちいさな棘に持っていく。
「あ、」
ぴくり、と阿弥のからだがはねる。

感度良好。

喪助はにんまりと頬を緩めた。

触れるか触れないかのぎりぎりのところで指を行き来させる。
思ったとおり、もどかしそうに腰がひくつく。
そこで軽くつついてやると、背をのけぞらせ、感に堪えないような声を漏らした。
「あ、あ」
堰を切ったようにとろりとした液が溢れ出す。
それを阿弥の指で掬う。
「女はみんな、こうなるんだよ」
じっくり阿弥の反応を見る。

阿弥はもうぼんやりとしていた。
どうしようか迷っているのだろう。
喪助はほくそえむ。

まだ幼いからだに、恥ずかしくも火が点いてしまったわけだな。

「わかるかな」
意地悪く、耳元でささやく。
「も、いい。わかったから」
阿弥は泣き声でやめろと訴える。
「だめね。ぜんぜんわかってない。教育が必要よ」
喪助は無慈悲に却下した。

すでにプランは練ってある。

「じゃ、今度はこれ使ってみるか」
籠の中からパンパンに空気が詰まったボールを取り出した。
「たっぷり可愛がってやるぜ」



4
なだらかな体の上でボールを行き来させる。
肝心のところはさっきとおなじように圧しつけて擦る。
そのくりかえしに、阿弥はなんどもびくびくと痙攣した。
「も、いいだろ、喪助」
すっかり疲れきっているようだ。
「まだだよ」
臙脂色のブルマーに手をかけ、ひき下ろす。
「お、かわいいじゃん」

レースに縁取られた可憐なパンティの真ん中あたり。
とても恥ずかしい状態になっている。
俗に言う、花染めだ。

喪助はじっくり見つめた。
視線を感じるのか阿弥は腰をもぞもぞさせる。

「もうびちょびちょだから脱いじまおうな」
「やめろ」
阿弥の弱弱しい抵抗を無視してパンティーに手をかける。
お尻のほうからペロンと皮を剥くように引っ張って、そのままするするとひき抜く。

白い下半身が剥き出しになった。
さっそく膝を割ろうとすると、激しく脚がばたついた。
喪助もさすがにかわいそうになってやめる。

立てた膝の間に手を差し込んだ。
指があたたかな泉水に触れる。

すぐに、そこから泉が湧き出すところを探り当てた。
喪助はそこに人差し指を少し沈める。
「今度はこっちを可愛がってやる」

「や、ばか」
阿弥は身を起こそうとした。
「こんなとこ、いいはずない」
「なんで」
「赤ん坊が通る道じゃないか」

知識はあるらしい。
場所も知ってるらしい。
保健で習ったのだから当然か。

「やってみなきゃわかんねえだろ」
良かろうと悪かろうと全部さらけ出させるつもりだし。
「ちょっと痛いかもな」
そう言って、おびえる阿弥に指を深く沈めていった。

興奮と、満足感が喪助の体を満たしていく。

オレが一番乗りだ。
そして、誰にもつかわせない。
オレだけの秘密の小箱。

阿弥の体内は思ったよりやわらかい。

壁を探っていくと、阿弥はぐっと腰を引いた。
「ああ、痛かったか」
「痛くない」

中指でまさぐりながら、人差し指で入り口を刺激する。

「痛くないけど、なんか」
肩をつかんだ手に力がこもる。
「お前、ひょっとして感じてんのか」
笑って囁きかける。
「違う」
「いいって。うれしいぜ。阿弥ちゃん」
まんべんなくまさぐる。

ある一点で、ぐっと腰が浮き上がった。
「お」
少し強く、そこを押す。
阿弥は生意気に腰をひくつかせている。

これは、思ったよりいけるかもしれない。
と、いうより、いかせてやれるかもしれない。
さすがオレ。なにをやっても惚れ惚れするほど完璧だ。

喪助は阿弥をマットに降ろした。
上体を起こさせ、背中を先ほどまで使用していた跳び箱にもたれかけさせる。
いぶかしがる阿弥に命令する。
「そのまま、ちょっとお腹に力入れてろ」
「喪助」
阿弥は喪助を不安げな表情で見上げる。

ああ、かわいい。たまらない。

喪助はできるだけやさしい声を出した。
「大丈夫。良くてたまらないようにしてやるよ」
「そんなのいやだ」

今更遅い。

指を二本、揃えて押し込む。
内側からお腹側の壁をこする。
「痛いか」
阿弥は首を振る。
さらに力を込めて指を出し入れする。
「な、なに」
阿弥は喪助の肩にしがみつき、がくがく震え始めた。
「な、なんか」
「うん」
「なんかへんだよ」
「うんうん。へんになっちまいな。オレが受け止めてやるから」
先ほどみつけたスポットを探り当て強く圧しつける。

「ん、ん、ん」
つま先がそる。
腰が浮き上がり、硬直する。
阿弥は初めての絶頂感に浸った。

阿弥はしばらくその状態で震えていた。
やがて、緊張が解けたらしく大きく息をつく。
「はあ」

喪助はにやにやしながら尋ねる。
「なあ、けっこうよかったろ」
阿弥は両手で覆っていた顔をあげた。
「さっさと手、洗え」
もう冷静な声である。

すこしは余韻に浸っていてもいいのに。

喪助はがっかりした。

そんなに良くなかったのかもしれない。
やっぱり、腰が抜けるくらいってのは無理かな。
まあ、最初だしな。


5
ふたりで倉庫を出る。

阿弥に監視されながら喪助は入り口の水道場で手を洗った。
「これでいいか」
阿弥はほっとしたようにため息をついた。
そしてくるりと喪助に背を向けた。
「お前なんかきらいだ。どこまでオレをバカにすれば気がすむんだ」
声が震えている。

恥ずかしいからか。怒っているからか。
きっとその両方だろう。

喪助はいつになく真面目に言った。
「バカになんかしてない」
阿弥は振り向かない。
「お前、かわいいし、色白でぷちゅぷちゅしてておいしそうだし」
「変態」
すかさず突っ込まれる。
喪助は構わず続けた。
「オレが男ならほっとかないぜ。」
「オレは男なんか興味ないよ」
「わかってる。でもさ。お前は義理堅いから」

喪助が男だったらどうするか。
なりふり構わず言い寄る。誠意を尽くして口説く。
そうすると、阿弥はいつか情にほだされてしまうに違いない。
だから、そうなる前に先手を打つのが一番。

「お前は二股なんて絶対かけられないもんな」
阿弥が振り向いた。
「二股って、お前、オレのこと好きなのか」
喪助はあきれた。
いまさら間の抜けた質問である。
「なんだと思ってたんだ」
「おまえのことだから冗談だと思ってた」
「お前な、男じゃあるまいし、好きでもないのにこんなことしないよ」
「だって、おまえ」
阿弥は耳まで赤くなった。
「お前、まだキスもしてないじゃないか」
喪助はふき出した。
「笑うな」
「お前、それでスネてるのか」
阿弥は応えない。
でも、その顔が告げる。
「その通りだ」と。

どうやら、阿弥も喪助を憎からず思っていたらしい。
もちろん硬派な阿弥のこと、こんなことをする気はなかっただろうが。

見事、喪助の体を張った告白は成功した。

「阿弥」
喪助はまわりを確かめもしない。
丸いほっぺに唇を当てる。
見たいやつには見せてやろう。
「悪かったな」
「ふん」
阿弥は恥ずかしそうに顔をそむけ、それでも拒まない。

しなやかな肢体を抱きしめる。
そのどこもかしこも適度にやわらかい。
「ホントに、このからだ。男なんかにはもったいない」
腕をさする。
手触りも抜群だ。

喪助は誓った。
最高に誠意を込めて。
「大事にするぜ」


おしまい


花園(上)>花園(下)