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更衣室に入ると、急いでシャワーを浴びた。

ふたりとも裸のままブースから出てきた。
すぐに服を着るのはもったいないような気がしていた。

喪助は言った。
「忘れないように、お前のからだ、よく見せてくれ」

オレは丸裸のまま、広い机に横たえられた。
机の高さはちょうど喪助の腰のところで、いろいろやりやすそうだ。
痛くないように背中の下には座布団が並べてある。

でも、この格好は。

喪助はにやにやしている。

「女体盛りみたいだな」
「ばか」

大バカだ、お前は。
こんなときまで変態なんだから。

「電気、つけるぞ」

部屋が明るくなる。
オレの裸が全部晒される。
オレは硬く目を閉じた。


オレのからだで喪助が見ていないところなんかないはずだ。
なのに、今更。

全部って、もちろん、外から見えるところだけじゃない。
オレの脚を開かせて、指をかけて、あいつはすみずみで確認する。

「よく見ておかないと。オレのもんになったんだから」

絶対いじわるでやってるんだ。

じんわり涙が出てきたが、その行為に興奮している自分のからだに気づいていた。
しだいに腰の周りが熱くなってきてくる。

喪助は気づいているはずなのに無視している。

「やっぱり貝に似てるな」
「喪助」
「ピンクですべすべの桜貝だ」

耐えきれずに思いを込めて言った。
「喪助、もう、やめて」
「なんで」
「いやだ。もう、からだが」

じんじん痺れてきた。

「いやだってわりに、ここ、どんどんとんがってきてるぞ」
「ひっ」

疼きの中心をつつかれる。
あまりのここちよさに腰がくねった。

もっとしてほしい。なのに。
喪助の指はすぐに離れてしまう。

「じっとしてろ。こらえ性のないやつだな」

あんまりだ。

オレはとうとう泣いてしまった。
「お前はいじわるだ」
どんなに抗議しても聞いてもらえない。
オレのそこを道具でも点検するように調べている。
「次、こっちな」
今度は四つん這いにさせられた。
「いやだ」

机の上でお尻を突き出している。

喪助は指を押し付けて開き、奥を眺めている。
「こっちもかわいいな」
楽しそうに言う。

これは視姦だ。
お腹の中が熱くてしかたがない。
自分でも見たことのない、いちばん恥ずかしいところを晒している。

脚の間がもうどうにもならないほどに疼いてる。
喪助が触れてくれないから、自分でおさめるしかなかった。

そこに手を伸ばす。
刺激を欲しがっている場所に触れる。

「あ、」

軽く触れただけで飛び上がりそうになる。
オレはそれを挟んで擦り上げた。
すぐに絶頂が訪れた。


余韻で震えているオレに、喪助が言った。
「誰がオナニー見せろと言ったよ」
楽しそうに笑ってる。
「だって、お前が」
「オレは見てただけだ」

また、涙が出そうになった。

「よしよし、悪かった」
頭を撫でる。
「お前が感じてくれてうれしい」

みっともないことをしていると思う。
女同士で。
いつも偉そうにしているオレが泣いていて。

でも、拒みたくはない。
自分のからだにうそはつきたくない。

喪助はやさしく聞いてくれた。
「どうしてほしい」
「指、入れて」
オレは恥ずかしげもなくおねだりする。

喪助がオレの上になった。
オレは仰向けになって脚を開く。


「ああ」

からだの奥に入ってくる。

喪助にからだを開かされている感じが好きだ。
セックスにはなってないんだろうけど。
喪助が入ってきていると感じる。

喪助がオレの中で動く。
オレは腰を持ち上げていいところに当たるようにする。
そこを擦ってもらうとすぐにいってしまう。

喪助は一度目の波が去ってもオレの中から出ていこうとしない。
今度はゆっくりとさぐっている。

一度達してしまうとオレの内部は全部がよくなっている。
どこを突かれてもからだが反応する。

抵抗はない。
いやらしいからだになったとも思わない。
お前を受け入れて気持ち良くなっているのがうれしい。

オレが数え切れないくらいいってぐったりしてしまうと、
喪助はようやくオレの中から指を引きぬいた。

「はあ」
オレはつっ伏して波が去るのを待つ。

身を起こした。
「今度はオレが」

喪助は拒みはしない。
おとなしく机に横たわる。

長々と横たわるからだに見とれた。

いつ見てもうらやましいプロポーションだ。
どうしてこいつは胸とお尻にばかり肉がつくんだろう。
まったくにくらしい。

胸に触れる。
豊かな肉をつかめるだけつかんで揉む。

前から気づいていた。
いつも、喪助のからだはオレが触れるとき、すこしだけこわばる。
愛撫を続けているとリラックスしてくるんだけど。
喪助は受身になるのは性にあわないんだろうと思っていた。

でも、そうじゃなかった。

オレの知らない、むごい記憶があるからだ。

お前はどんな思いをしてきたんだろう。


「阿弥」
喪助が手を伸ばしてきた。
「どうした」
「なんでもない」

お前がかわいそうだ。
オレがこんなにいとしいと思うお前が。
この綺麗な、この上もなく愛されるためにできているからだが。

理不尽な暴力にさらされたことがあるなんて。

あんまりだ。

涙が出てきた。
「どうしたんだ」

そのまま、泣いてしまいそうだった。

喪助に思い出させちゃいけない。
これから大事にしてやればいい。

触るのはやめにした。
首筋に軽くキスをした。
肩、胸、背中。
そっと触れるだけの口付けを繰り返す。
膝の裏にまで唇をつける。

「喪助、愛してる」

こんなことをするのは好きだから。
好きな人しかしないキス。
お前がこんなに好きだという思いを込めて。

「阿弥」

喪助の声がすこし上ずっている。

「好きだよ」
「オレもだ」


それからは無我夢中だった。
あいつの体中を舐めてやって。
あいつはびっくりするような声を出してオレを求めて。
オレは全身全霊を込めて応えた。

喪助はオレにすべて委ねてくれた。

「喪助、愛してる」
「オレも愛してる」

何回、何十回言ったかわからない。
言うたびに体がうずき、言われるたびに心が満たされていった。
オレは死ぬまでこの晩を忘れない。


オレはお前を離さない。
いつか、二人でドレスを着て。
そのときこそずっと一緒にいよう。
二度と離れない。

オレは何年でも待つ。
四年では済まなくても。
たとえ十年でも、しつこく待ちつづける。
だから、喪助。

お前と別れるときは笑っていよう。


おしまい


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